壺の中の泉

きらめきたい

貧しく、弱く、脆い思考を改めよ/3年A組―今から皆さんは、人質です―1話感想

やみつきになる、このスピード感…!!

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1話を見ました。
仮面ライダービルドの脚本を書かれた武藤将吾さんのオリジナルドラマだそう。
率直に言って、ものすごい展開の速さに笑いたくなるほどでした。
卒業までの10日間を描くらしい。1話で1日という構成なのでしょう。
1日目だけでもう解決するのでは…!?と思うような展開の速さ。しかし、その向こうにはまた新たな展開が待っているに違いないのです。
だって物理的にまだあと9日あるのだから…!えっ、でも、残り9日もあるのにどうするの…!?
というこの感覚が懐かしい!知ってる、この感覚…!!
ちょうど1年前、毎週のように驚かされていました。それが8月末に終りを迎え、ビルドのない日々をなんとなく過ごしていたら、今。
このスピード感を久しぶりに浴びると、なんとまあ癖になること。
これはもうわたしがビルドのオタクだからかもしれないけれど、このスピード感を求めていることに気づいちゃったんですね。
別にそういうところが特段好きだったわけではないのに…などとツンデレにならざるを得ない。

ところで、こういうあたまのわるそう*1な学園モノは苦手だしドキドキハラハラ血が流れるよ!系も苦手で、密室系も苦手で、まあ苦手のオンパレードみたいな作品なんです、これ。
それなのにどうして録画してまで見たかというと、Twitterを眺めていると視界に入ってくる公式関係者による熱量がきっかけとして大きかったかなあと思います。あと武藤脚本を特撮というフィルターなしで見てみたかった。

そして根が俳優オタクのわたし、果たして目当てのキャストのいないドラマを見ることができるのかチャレンジ。
結果としては、視聴続行を決めたわけですが。ずるいよね。先が気になって仕方がないんだもん。

いい意味でたくさん裏切られたから、と言うべきかもしれない。

小説家や脚本家を(評するという意味で)見るにあたり、わたしは物語の運び方とか秀逸な伏線回収とかにはあまり注目する力がなくて、言葉により形成された世界を好きになれるかどうか、が一番大きい。
3年A組は、好きになれた。好きになれる瞬間があった。だから「あ、いいな」と思ったのです。

しかも、一見好きになれるはずがない作風なのに…!なんというかもう、やられた、としか言えません。ええー…悔しい(笑)

この作品はいじめ問題をがっつり扱っていて、これは場合によっては絶対に好きになれないなあってちょっとびくびくしながら見ていました。
とくに、"友達だったはずなのに何もできなかった"人が作品全体で責めるということをされたら嫌だなあって。それは薄っぺらい。
で、この物語は(まだ1話なのに)そこに踏み入るわけです。まだ開始○分だよ…!っておもしろくなってきたところで、地雷だったらどうしようというハラハラ感にぶち当たり。でも大丈夫で。…という、心の動きを乱高下させるような場面の運びですら仕組まれてたら怖いなあなんて思うのでした。

さて、"一歩間違えれば地雷"だったのにどうして好きになれたのか。何が違ったのか。

クラスで空気同然に扱われていた生徒(景山澪奈)が自殺した。
その生徒と仲が良かったヒロイン(茅野さくら)が自殺の原因は「私のせい」と語る。

これを1話でやっている時点で笑いたくなるほどの展開の速さなんですが、同時にわたしは「え~~!出た~~!」などと地雷の予感にハラハラしていました。でも。それは違う、と否定された。

さあ、景山澪奈はなぜ自殺したのか答えよ。

という問いに対するさくらの解答に対し「不正解」と柊先生ははっきり言いました。
その瞬間、思った。ああ、このドラマは違う、って。

澪奈の死から目を背けていたさくらが過去と向き合い、思いを吐露し、涙した。
柊先生の知っている「解答」とは違えど、求めていた「解答の姿勢」でした。

いじめ問題とどう向き合うのか。とてもデリケートな話題。
日曜10時台の全国放送ドラマで、こういうものに対して軽率な答えを出してほしくないと思っています。(元々ドラマを見ないので今どきそんなことがあるのか分かりませんが…)
答え(いわゆる"筆者の主張")を暗に示しながら…というかスパッと言い切りながらもそこに絶妙なバランスを求めてしまう。

いじめ問題といえば、わたしが信仰しているドラマ「アンナチュラル」でも扱われていました。
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許されるように生きろ、という答えがすごく響いたのを覚えています。

今回の話も、そう。目を背けるな、過去と向き合え。柊先生の本気のメッセージはそういうことだと思います。
わたしの考えとベストマッチしているだけかもしれません。ただそれだけではいけない。絶妙なバランスこそが大切。そんな、世界に対する解釈が合う物語が好きなんです。

そういえばビルドを見ている時も世界に対する解釈のフィット感について考えていました。
krgph.hateblo.jp
そう、やさしい世界が好き。


何かとビルドと引っ掛けて考えてしまいますが、ほんの少し先までなら展開を予測できるところも、まだ半分も終わってないよ!?というスピード感も、都合よくアイテムが出てくるそこはかとない四次元ポケット感*2も、第九交響曲*3も、何もかもが懐かしく感じました。冒頭でアクションシーンが流れた時は見る番組を間違えたかと思いました。ビルドで学んだことを3Aで演習してみよう!みたいな気分です。

ビルド脚本に関して関係者の言葉の中で、"仕掛け"が"発動する"という言葉をよく聞きましたが、この猛スピードで展開した第1話――1日目でやはりすでに様々なことが仕込まれているのでしょう。

1日目終盤で刺されてリタイアの中尾蓮はキーになるに違いない。1日目でリタイアする役の人がこのドラマをきっかけに期間限定でTwitterを始めるわけがない。*4
彼と彼が刺される一連の流れのすべてに違和感(芝居感)がありました。廊下を塞ぐ瓦礫を前に「すぐにここから出てやる」と彼女の手を取る人が柊先生の本気の語りかけの最中に「ふざけんな」と入っていく軽い人間とは思えない、とか。というかあの流れはひたすら芝居感。
パッと見た感じだと、刺した瞬間に音がしなかったことにまずアレ?となりました。無音演出とは違うところがまた違和感。
でもこういう時って本当に死んでたりするよね…分からない……何も分からない…翻弄されている……

あとね、なにより柊一颯先生のキャラクター造形がすごい。あとからじわじわきます。
菅田将暉さんもとうとう先生役かあ…なんて感慨深くなっている暇なんてありません。
ひいらぎいぶき、って音がよくて口にしたくなりますが、彼自身のリズム感も癖になりそうです。たしかに第九交響曲が似合う。まるで演奏のような立てこもりですね。美術教師だけれど。
そして嘲笑うような音色の中に、本気の語りかけがあって、それがはっきり分かるのがすごい。あんな風に本気で「お前ら、揃いも揃ってクズだな」と言う人が、本当に生徒を殺すかな…?と思いました。思わされました。それすらも仕組まれていたら何も信じられない。

1話を見てからある程度時間が経つのですが、ほんとうにじわじわと、柊先生……いやはや、好きですね。
美術教師の柊先生による人質演奏―第九交響曲をしばらく楽しみたいと思います。
cu.ntv.co.jp


最後はバタバタとしめちゃいましたが、次回もまた感想エントリを書こうかなと思います、では。

*1:こう言いたくはないけどたぶん一番適切な表現

*2:物語を展開させるために都合のいいことが起きても、実際の世界はそういった偶然の重なりで物事は運ぶ。こともある。要するに若干のガバ

*3:仮面ライダービルド29話

*4:三船海斗&STAFF on Twitter: "三船海斗&STAFFツイッターを期間限定で始めました! 三船海斗が出演いたします、 日本テレビ「3年A組 ―今から皆さんは、人質です―」第1話がO.A中です! ぜひご覧ください!! #3A… "