壺の中の泉

きらめきたい

帰る場所という哲学/「アンナチュラル」8話

 第8話はなんだかまとまりがないなあと感じました。決してわるい意味ではなく。論理的でないと言ったがいいのかな。あちらこちらから飛び交う誰かの声や動きや事実背景。人が生きているってこういうことだよね、と思います。文章だけが一文ずつ丁寧に羅列している世界ではない。好きです。
 いよいよ残り2話だそうです。1~8話を通してUDIがみんなの帰る場所、居場所になったのだと思います。ラストのみんなで飲んで食べてるところにぶわっっときました。そこに中堂さんがまるで自分の家みたいに寛いでいることにもわたしは感動しています。あ~~~あの5人なんだな~~~~これぞ!っていう気持ちになるでしょう?
 ほんとうに、9、10話でついに終わり。ぜっっったいロスになる!!!アンナチュラルロス!!!分かりきっている未来!!!!!
 宍戸さんがキーを握っていることは確かですが、というかあからさまに一番怪しいですが、怪しすぎて怪しくない。でもその考えをもひっくり返されそうで何が何だか、という感じです。さすがアンナチュラル……(?)
 諸事情によりいつもより少し短めの感想文です。この習慣もあと2回と思うと寂しくなります。

帰る場所

 今週のキーワード、帰る場所。家族問題と見せかけた居場所問題。と言いつつ結局は家族問題なのかな…みたいな。
 家族と和解できなくてどうしようもないこともある、それでも自分の信じた居場所では思いっきり笑えるよね。そういう風に感じた8話でした。町田さんのスナックでの笑顔と久部くんのUDIでの笑顔は重なります。それと久部くん、強く生きてほしいなあとしみじみ思いました。正直まさかの勘当オチでびっくりしましたが、これが久部家の現実なんですね。分かり合えないものは分かり合えません。分かり合えないからってそこまでする?と思いますが久部パパがそういう人だったというだけの話です。可哀想に。あんなにまじめに迷って悩んで考えている久部くんの帰る場所を手放しちゃうなんて、久部パパは可哀想な人です。
 でも実家信仰みたいなものはないけれど、死んだらどこに帰るかってやっぱり血縁だとか戸籍だとかを考えなきゃいけないみたい。その事実を知らされた第8話……難題だなと思いました。

 そして何より、UDIがみんなにとって"ただいま"と"おかえり"が言える場所になっていて素敵だなと思います。この空気感で9話10話に向かうの、いいな!というか中堂さんは元々住み着いていましたね……物理的に家にしている……精神的にはどうなんですか…………ねえ……
 そういえば中堂さんと糀谷さんは一緒に住んでいたということが明らかになりましたが、中堂さんにとって8年前のそれまではそこが帰る家、ただいまを言うところだったんだなあと思うと限りなくしんどいです。次回ついに回想シーンがやってくる!33歳の中堂系が放映される!ついに終わりに向かうんですね。最終話、中堂さんは笑えていますように。

優良物件・木林南雲

 28歳独身今のところ決まったお相手はいない木林南雲さん、公式優良物件ですってよ(瀕死)
 ちゃんと生きているなあと回を重ねるごとに感じることが多くなりました。あんなにうさんくさくて怪しさしかなかった葬儀屋がだんだん誰をも惹きつけるようなキャラクターになっているの、ほんとうにすごい。わたしは木林さんが好きです。元より目的は竜星さんだったのでそれはそうなんですが、その意味でもますます好きになりました。
 8話に関して言えば、木林さんが脚を開いて座っていることに今世紀最大のギャップ萌えを感じました。なにあれ!なにあれ!いやほんと細かいんですけど、ミコト母と毛利さんの3人でわいわいしてるシーンを見てください!よく見てください!座り方!!でも足(靴)は閉じてるの。てかなんでUDIであの会議は開かれているの…?8話というかアンナチュラル全編通して一番の謎……まあ便利な場所ではあります。たぶん。
 あと町田さんのご遺体を運ぶ時に車に乗り込む木林さんのスタイルがよすぎてビビりました。映像版MEN'S CLUB*1かと思いました。そういえば助手席に乗っていました?運転は部下、上司は助手席…という風習が葬儀屋の世界でもあるのでしょうか。助手席に乗る木林さんも見てみたい!それにしてもスタイルいいなあ(しみじみ)
 木林さん黒幕説が拭えなくてそわそわしていましたが、8話でミコト母と毛利さんとの会議がセッティングされていたことで、ああこういう枠なんだなあ、と。映画でもSPドラマでも続編でも何でも、ずっと木林さんを追い続けられるという確信を少しだけ持てました。

死は簡潔的である

 バチで死んだんじゃない、クモ膜下出血で死んだんだ。
 アンナチュラルのそういう解釈がほんとうに好きです。あるべきところに情がある。おさまりがいいな、とも感じます。
 アンナチュラルの基本的なスタンスは、死に対してそれ以上もそれ以下もない、なのかなって思いました。公式サイトのミコトの紹介文に「この世に美しい死はなく、死んでしまえば終わりだと考えている。」と書かれているところにも繋がります。とはいえ、終わった人生には完結した物語がある。アンナチュラルが描いているのはその部分なのだと思います。7話で白井くんがミコトに言わせたかったことはそれ。4話で明らかにした事実だって、3話の事件の全貌だってそう。
 所長が言うように"たまたま生きている"わたし達は、ただ今を生きることしかできないのだと思います。すごい抽象的な言い方になってしまうけれど。
 何ができるか考えたり、自分の役目を果たしたり、好きな服を着たり、ご飯を食べたり、それらを総じて「生きる」ということ。アンナチュラルは見ていて気持ちが楽だと常々思うのですが、もしかしたらそういう生死観がそうさせているのかもしれません。みごとなまでにバイブルジャンルとなりました。これからも楽しもうと思います。

*1:竜星さんが毎月載ってるメンズ誌。めちゃめちゃモデルしてるしフォトジェニックすぎて最高です。

白米を食べて生きるのだ/「アンナチュラル」7話

 第7話、いじめ問題。アンナチュラルはあらゆることを扱っているなあと思います。次回はおそらく家族問題。
 そういう社会問題に対してスパッと一言で述べるところが好き。というのはよく見かける意見だし、わたしもそう思います。無駄がないところがいいな。とても見やすいです。ところで次回、久部くんが救われそうでよかった。安心するのはまだ早いけれど!
 そういえば、今回の話の後でミコトがそれはもうとってもおいしそうに食べているのが"白いおにぎり"で、ずるいなあと思いました。この世でいちばん尊い食べ物だと日本人のわたしは思います。食べることを大切にしている限りは、わたしがそういうものを主張する立場である限りは、真っ白なご飯の美味しさを忘れてはいけないから。…といった感じで主観にまみれた感想文を今回もつらつら綴ります。

「生存者の罪悪感」

 今週のキーワードでした。専門用語っぽい言い回しをするなあと思ったら、本当にそうみたい。「サバイバーズ・ギルト」と言うらしい。治療を要することもあるっぽいけれど、"残された"人間にとって珍しくないということなんだなあって7話を見て思いました。中堂さんを指して「生存者の罪悪感」の話をしていたし、白井くんもまさにそう。それは単純に伝わってきました。ミコトもそうだ、という描かれ方もしていて当然のように納得しそうだったけれど、そうなの…?!とも思わされました。一瞬だけ。母親に家族をまるごと殺され、自分も殺されかけて、"罪悪感"を感じるんだ~~って。でも、そうだよね。たしかに、そう。単純に納得はできないけれど、一周回って納得した、という感じです。
 「生存者の罪悪感」が拭われないのは「死人に口なし」だから。中堂さんはそれをよく知っている人で、だから白井くんにそう伝えて、「許されるように生きろ」と言えた。あの時、白井くんを止められるのは中堂さんしかいなかったんだなあと思うとすこぶるしんどいです。重い。すっっごい重い回でした。話が重いとか、シリアス過ぎるとか、そういうのではなく。中堂さんがそれを言う、それができる、止められる、そういうすべてが重いと感じました。
 正直5話より重い。5~7話は繋がっていました。殺したやつは殺される覚悟をすべきだという中堂さんの5話、どんなに悪いやつでも殺されるのを見過ごすわけにはいかないというミコトの6話。そして7話、生き残った者が自ら死ぬのを止める中堂さん。ある意味、まさかの展開です。その角度から考えようともしなかったので。
 それに複雑でどうしようもない。中堂さんは「許されるように生きろ」と自分自身にも言い聞かせているのかというと、どうなんだろう…と思います。結局のところ中堂さんの真の目的って何なの?7話のおかげで分からなくなりました。
 生きることってそんなに難しいことじゃないっていう現実を感じつつも、そうすることが難しい一面も多々あるのが現実だって、これまでのアンナチュラルを見てきて思います。「許されるように生きろ」って、重い。今まで描かれてきた現実に重い現実を突きつけられて、余計にしんどいのかな。でもミコトが白いおにぎりを食べるシーンはやはり救いでした。白米を美味しいと感じて生きることをおざなりにしちゃいけない。それだけは揺るぎない事実だと思います。

殺人者の遊戯

 7話のサブタイトル「殺人遊戯」は殺人者Sによる実況のことを指していると思いきや、"いじめ"のことを指しているんだなあと思いました。そんなものはお遊びではない、それは殺人だ。殺人遊戯だ。罪だ。いじめっ子三人組、最初は笑って見ていた委員長、あいつらを犯人に仕立て上げる自殺の方法を"遊び"で企んでいた白井くん、彼らによる遊戯。白井くんが"殺人者S"と名乗ったのは演出のためではなく本音だったのかなと思います。

 ところで、最近わたしは子どもの教育についてよく考えます。大人は子どもに対してどう振る舞えばいいのだろう。何を提示すればいいのだろう。分からない。でも分からないなりに、いいこととよくないことの判別はつきます。よくないことさえしなければ、あとは子ども次第なのかもしれない。よくないこととは例えば、7話で言うと赤ジャージの担任の言動。大人にも分からないことは子どもにもまっすぐ伝わるわけないし、大人が分からないのなら子どもにいろんな世界を見せてあげればいい。まあそのあたりの答えさえ分からないから、トートロジーってやつなのでしょう。余談でした。

「赤い金魚」

 中堂さんがとうとうミコトに協力を要請した!頼み方がかわいい!かわいいぞ!
 初めて「赤い金魚」が目に見えて登場して、さっぱり分からないなと思いました。連続殺人だとして、この痕は何…?何の意味がある?中堂さんみたいな人でなければ気付かない。坂本さんのいる明邦大学でもスルーされた。証拠にもならないらしいから、法医学的初見としては意味がないものなんだろう。だとしたらメッセージということになる。恋人が殺されて解剖する羽目になった中堂さんはきっと徹底的に調べて"赤い金魚"にも気づく。その後繰り返されているということは、他の誰でもない中堂さんに対するメッセージ…?でもそこまで仕組むことって難しいですよね。殺された恋人のご遺体を解剖させるって。できるのかな。分かりません。
 中堂さんに伝わらなきゃいけない。中堂さんに赤い金魚が届かなくてはいけない。それができるのは、誰…?
 今回、葬儀屋木林さんが出なかったんですよね。1話から通して初めてです。いつもなんとかして最後にふらっと現れていたのに。同時刻、新たに「赤い金魚」が発生しました。木林さん、どこで何をしていたの?ラストの「赤い金魚」は普通はこうやって見逃されるんだよーっていう意図だったと思うんですけれど、いつもなら最後にふらっと現れる木林さんの代わり……と深読みおたくは思ってしまいました。中堂さんに赤い金魚を届けられる人物だなあ…って。木林さんが中堂さんに協力している理由もきっかけも、まだ何も分かってなくて結局は謎のまま。
 6話であんなにはっちゃけて、最初は怪しかったけどいい人じゃ~~んって気分になって、7話で出ない。わたしは葬儀屋贔屓だから、出ないことに強く何かを感じてしまうんですが。でもでも、8年前って木林さんは20歳だから、ね。分かりません。このまま謎のマスコット的にいい人であってほしいとも思うし、黒幕な彼も見てみたいとも思います。しれっとインタビューが公開されていましたが、何も分かりませんでした。
 わたしが知っているドラマや映画での黒幕はだいたい相関図の隅っこに何気なく座っている人物です。三澄家は違うって思えるし、まっすぐにマスコミ組ではおもしろくない。残り、当てはまるのは木林さんと刑事さん達。どっちかな。どっちでもないかな。今の相関図にいない人かもしれない。そもそも「赤い金魚」と殺人が関係ない可能性だってある。毎回予想の斜め上を行くから楽しみです。ど、どうなるんだーーー?!
 アンナチュラルにおける木林さんのポジション的重さもわたしには判断できませんが、とりあえず木林さんめっちゃ好きということだけは分かります。だから今後の彼に注目したいし、シリーズ化するとしてずっといてくれ~~とも思うのです。黒幕サイドにいながらずっといることになる…みたいな展開だったらいいなあ。ただの願望です。