壺の中の泉

きらめきたい

謎の答えは、不条理な死/「アンナチュラル」9話

 9話を見終えた直後はなんと言っていいか分かりませんでした。犯人は予期せぬ男で。しかも8話の雑居ビル火災の生き残り!そこ!そこからくる…??!相関図にいた人ではない、でも突然現れた全く無関係の人間ではない。そっかーーーなるほど…と思いました。しかし謎の正体は「不条理な死」です。つらい。つらすぎる。
 蟻酸を出さない蟻の死骸から蟻酸検出→蟻酸→ホルムアルデヒド(ホルマリン)+酸素、という流れがとてもおもしろかったです。しかもホルマリンは遺体解剖において最大とも言える盲点。灯台下暗し。めっちゃおもしろい!って思います。こういうとこ。
 灯台下暗しと言えば、神倉さんが警視庁のお偉い方に自分の足元をご覧になった方がいいですよーって言われていたのもそうですね。というか久部くんの件、解決したように見えてしてなかったーーー!
 いよいよ次回は最終話。どうなるんだろう。UDIはいったいどこへ向かうのか。
 

敵はなんだ

 1話でミコトが中堂さんに言った「二人なら無敵」
 中堂さんが聞き返した「敵はなんだ」に対するミコトの答えは「不条理な死」
 中堂さんがずっと追いかけてきた赤い金魚の謎、敵の正体はその通り「不条理な死」でした。
 異常犯罪者による無差別連続殺人…と今の段階では分かっています。
 A-Zの頭文字の手段で殺人を繰り返しているから、手口は毎回違う。不動産屋だから、転機を迎える若い女性を狙える。
 魚のマークが可愛らしい子どものおもちゃを猿轡として使って同一犯のサインとしたり、殺人手段で埋められたかわいいアルファベットのポスターの前でピースで写真を撮ったり*1、殺した女性の靴やカバンなどの色とりどりの所有物を晴れやかな庭で燃やしたり。
 その異常な趣味嗜好が、燃やしてる時に流れる音楽によって強調されていたと思います。
 そんなたったひとりの殺人者のお遊びのために無関係の未来ある人が殺された。あまりにも不条理です。
 でもそんなやつのために中堂さんが人を殺すところは見たくないなあと、やはり今までの話を見てきたからこそ思います。二人なら無敵なんだから、ね!

中堂さんの昔と今

 あの過去があってもなくても中堂さんは傍若無人のオラオラ男。そんな中堂さんが好きよ!ね!かわいい面もたくさんあるもんね♡♡
 糀谷さんとの回想シーンは、中堂さんが昔からそういう感じであることを裏付けるようでした。
 定食屋さんで出会うのってなんだかロマンがあるな〜
 「もう終わりか?」って営業時間を過ぎた定食屋に入っちゃう中堂さんにご飯を出す糀谷さんも、中堂さんを色男に描く糀谷さん*2も、ああ素晴らしき世界…と思います。逆プロポーズされちゃうところも中堂さんっぽい!
 夢を見ること、描くこと、そういうものが"理屈じゃない"と恋人の糀谷さんに教えられた中堂さんが、恋人を殺した犯人は法で裁かれるべきだという理屈はどうしようもないから、"理屈じゃない"問題だから、犯人を自分の手で殺そうとすることは、皮肉な運命だなと思います。
 
 中堂さんは10年前から変わらず、でもやっぱり"殻に閉じこもった"ようになったのはあれからなんだと思うと心が痛い。けれどその殻をUDIなら破ってくれそうだ、と信じたいです。
 

葬儀屋の理由

 木林さんの"良い男度"がものすごい速さで上がっていくアンナチュラル。でもそれって、隠れていたものが少しずつ分かってきただけなんですね。そう、なんせ演じているのが竜星さんですから。それだけで納得しちゃう。胡散臭さと怪しさ満点だった葬儀屋も今ではすっかりUDIとゆかいな仲間たちに馴染んでいます。公式サイトのインタビューページにメインキャスト5人と演出塚原さんに混じっていたから、もはやメインレギュラーでは?!とすら思いました。
 久しぶりに中堂さんと立って話しているところを見ましたが、画面がつよい!と思います。立ち姿がすごい。街中であの二人が並んで話していたら思わず振り向くに違いないです。ちなみに9話の木林さんのベストオブここが好き!ポイントは、お札から中堂さんへの視線の移し方です。
 ついにUDIで赤い金魚のご遺体を解剖することになってもなお協力を頼み続ける中堂さんに対する木林さんの呆れたような顔に、自分にはお金は入り続けるのにまだやるんですかと問うということ。木林さんが中堂さんに協力する理由は、単にお金のためだけではないと今までも思っていました。ですが、9話を見て、もっと別の意味で"お金のためだけではない"と感じました。言うなれば、情。お金をもらっている以上はそれとはちょっと違うのかもしれないけれど、そういうシンプルなものなのかなと思います。中堂さんに根負けしてるところはあるのかな。
 41歳と対等に話をする木林さんもすごいし、中堂さんは一体どこで木林さんを捕まえたんだ?とも思います。
 
 ん〜〜〜木林さんがこんなに優良物件とは思わなかったな〜〜!なんだかすごく、大好きです。



 全10話って、あっという間。こんなにハマるとは思わなかった!ほんとうにおもしろくて、好きな世界観で。終わるのは寂しいし、週末の楽しみが一つ減るのはかなしいし、ロス確定です。
 ただどうにか、あの世界でUDIが輝き続けますように。それだけを祈っています。

*1:あの笑顔にデジャヴを感じていたんですが、人間風車のサムでした。

*2:中堂さんはやっぱりどう考えても色男であった

帰る場所という哲学/「アンナチュラル」8話

 第8話はなんだかまとまりがないなあと感じました。決してわるい意味ではなく。論理的でないと言ったがいいのかな。あちらこちらから飛び交う誰かの声や動きや事実背景。人が生きているってこういうことだよね、と思います。文章だけが一文ずつ丁寧に羅列している世界ではない。好きです。
 いよいよ残り2話だそうです。1~8話を通してUDIがみんなの帰る場所、居場所になったのだと思います。ラストのみんなで飲んで食べてるところにぶわっっときました。そこに中堂さんがまるで自分の家みたいに寛いでいることにもわたしは感動しています。あ~~~あの5人なんだな~~~~これぞ!っていう気持ちになるでしょう?
 ほんとうに、9、10話でついに終わり。ぜっっったいロスになる!!!アンナチュラルロス!!!分かりきっている未来!!!!!
 宍戸さんがキーを握っていることは確かですが、というかあからさまに一番怪しいですが、怪しすぎて怪しくない。でもその考えをもひっくり返されそうで何が何だか、という感じです。さすがアンナチュラル……(?)
 諸事情によりいつもより少し短めの感想文です。この習慣もあと2回と思うと寂しくなります。

帰る場所

 今週のキーワード、帰る場所。家族問題と見せかけた居場所問題。と言いつつ結局は家族問題なのかな…みたいな。
 家族と和解できなくてどうしようもないこともある、それでも自分の信じた居場所では思いっきり笑えるよね。そういう風に感じた8話でした。町田さんのスナックでの笑顔と久部くんのUDIでの笑顔は重なります。それと久部くん、強く生きてほしいなあとしみじみ思いました。正直まさかの勘当オチでびっくりしましたが、これが久部家の現実なんですね。分かり合えないものは分かり合えません。分かり合えないからってそこまでする?と思いますが久部パパがそういう人だったというだけの話です。可哀想に。あんなにまじめに迷って悩んで考えている久部くんの帰る場所を手放しちゃうなんて、久部パパは可哀想な人です。
 でも実家信仰みたいなものはないけれど、死んだらどこに帰るかってやっぱり血縁だとか戸籍だとかを考えなきゃいけないみたい。その事実を知らされた第8話……難題だなと思いました。

 そして何より、UDIがみんなにとって"ただいま"と"おかえり"が言える場所になっていて素敵だなと思います。この空気感で9話10話に向かうの、いいな!というか中堂さんは元々住み着いていましたね……物理的に家にしている……精神的にはどうなんですか…………ねえ……
 そういえば中堂さんと糀谷さんは一緒に住んでいたということが明らかになりましたが、中堂さんにとって8年前のそれまではそこが帰る家、ただいまを言うところだったんだなあと思うと限りなくしんどいです。次回ついに回想シーンがやってくる!33歳の中堂系が放映される!ついに終わりに向かうんですね。最終話、中堂さんは笑えていますように。

優良物件・木林南雲

 28歳独身今のところ決まったお相手はいない木林南雲さん、公式優良物件ですってよ(瀕死)
 ちゃんと生きているなあと回を重ねるごとに感じることが多くなりました。あんなにうさんくさくて怪しさしかなかった葬儀屋がだんだん誰をも惹きつけるようなキャラクターになっているの、ほんとうにすごい。わたしは木林さんが好きです。元より目的は竜星さんだったのでそれはそうなんですが、その意味でもますます好きになりました。
 8話に関して言えば、木林さんが脚を開いて座っていることに今世紀最大のギャップ萌えを感じました。なにあれ!なにあれ!いやほんと細かいんですけど、ミコト母と毛利さんの3人でわいわいしてるシーンを見てください!よく見てください!座り方!!でも足(靴)は閉じてるの。てかなんでUDIであの会議は開かれているの…?8話というかアンナチュラル全編通して一番の謎……まあ便利な場所ではあります。たぶん。
 あと町田さんのご遺体を運ぶ時に車に乗り込む木林さんのスタイルがよすぎてビビりました。映像版MEN'S CLUB*1かと思いました。そういえば助手席に乗っていました?運転は部下、上司は助手席…という風習が葬儀屋の世界でもあるのでしょうか。助手席に乗る木林さんも見てみたい!それにしてもスタイルいいなあ(しみじみ)
 木林さん黒幕説が拭えなくてそわそわしていましたが、8話でミコト母と毛利さんとの会議がセッティングされていたことで、ああこういう枠なんだなあ、と。映画でもSPドラマでも続編でも何でも、ずっと木林さんを追い続けられるという確信を少しだけ持てました。

死は簡潔的である

 バチで死んだんじゃない、クモ膜下出血で死んだんだ。
 アンナチュラルのそういう解釈がほんとうに好きです。あるべきところに情がある。おさまりがいいな、とも感じます。
 アンナチュラルの基本的なスタンスは、死に対してそれ以上もそれ以下もない、なのかなって思いました。公式サイトのミコトの紹介文に「この世に美しい死はなく、死んでしまえば終わりだと考えている。」と書かれているところにも繋がります。とはいえ、終わった人生には完結した物語がある。アンナチュラルが描いているのはその部分なのだと思います。7話で白井くんがミコトに言わせたかったことはそれ。4話で明らかにした事実だって、3話の事件の全貌だってそう。
 所長が言うように"たまたま生きている"わたし達は、ただ今を生きることしかできないのだと思います。すごい抽象的な言い方になってしまうけれど。
 何ができるか考えたり、自分の役目を果たしたり、好きな服を着たり、ご飯を食べたり、それらを総じて「生きる」ということ。アンナチュラルは見ていて気持ちが楽だと常々思うのですが、もしかしたらそういう生死観がそうさせているのかもしれません。みごとなまでにバイブルジャンルとなりました。これからも楽しもうと思います。

*1:竜星さんが毎月載ってるメンズ誌。めちゃめちゃモデルしてるしフォトジェニックすぎて最高です。