壺の中の泉

きらめきたい

当たり前の幸福を祈る/「アンナチュラル」4話

 おもしろい作品ってなんだろう?
 わたしは、「キャラクター」「ストーリー」「余白」の3つが大事だと思っています。魅力的なキャラクターがおもしろい物語の中で動いて、それを見てあれこれ想像を膨らませる余白があること。そんな作品に出会うと、取り憑かれたみたいにずうっとそのことについて考えてしまいます。
 ドラマ「アンナチュラル」の話です。め~~っちゃおもしろい!エモい!美しいものとエモいものが大好きです。

 最近はSNSもコンテンツの一部を形成する時代ですね。公式Twitterがわたしたちの心のえぐり方を心得ているようでびっくりします。
 日彰医大の中堂系先生がしんどかった3話から四日後、絶妙に拗らせているタイミングでこのツイート。


 ビジュアルがつよすぎる。

 そしてその二日後。葬儀屋拗らせピークの頃、


 本当に息子だった………

 そして放送当日のツイートも、なんとまあぐさっときます(笑)
 散々、葬儀屋と中堂さんの関係が分かるよ!と匂わされた第4話。言うほど明らかになりませんでした。ま、まだ引っ張るの……
 石原さとみさんは今日もかわいいという感じ。あんまり見たことなかったんですけど、おかげさまでSteady2月号を表紙買いしました。髪の長さがこれくらいで、さっぱりしていて好きだな。あと法医学者女子会が華やか!

さまざまな夢

 4話は労働問題を扱いながら、裏テーマは「夢」でした。


 中堂さんのもとに運ばれてきた遺体が恋人だったこともミコトが目を覚ましたら一変していた世界も、一家の父が突然亡くなったことも、「夢ならばどれほどよかったでしょう」、それでも「今でもあなたはわたしの光」だからどうしようもない。そしてエモい。
 「夢」という言葉にはいろんな、いろんな意味があるんだね。

 わたしたちが一般に使う意味での「夢」の話。
 子供にとっての「夢」は大人を通して見るものなんだなあって。あったことをなかったことにする大人を見て「お父さんみたいにはなりたくない」という夢を持ってしまった子供は、事実を知ってきっと新たな夢を描いているだろう。そのきっかけを担ったのがUDIなのだから、UDIのドラマだなあと当たり前みたいなことを考えています。

 それと、夢は大きく、なんていう世間の謳い文句に怯えなくたって、目の前を見て生きているだけでいいんだって思わされました。
 なにやら怪しさがチラチラ見える久部くんが「夢とかまだ見つかってないし」と言うあたりは、まだ視聴者目線のキャラクターとして機能しているのかなと思います。それに対して「夢なんて、そんな大げさなものなくてもいいんじゃない?」と言うミコトの答えは、やっぱり見ていて肯定される、そういう気持ちよさがありました。

物語のテーマ

 主題歌の流れ方が天才すぎてすごいしんどいもうむり!って感じです。超エモい。入り方もサビのタイミングもかんぺきすぎて震えます。最後に歌をぶつっと切る葬儀屋も最高。
 まったくお涙ちょうだいではないのに、音楽と流し方といい構成といい演出ひとつで泣きそう~~!ってなるのはすごいなあ。「泣ける」ってなんだろう。わたしは物語の中で生きるキャラクターが泣いている姿よりも誰かが死ぬことよりも、心の底から笑っている姿に涙腺が揺さぶられます。

news.walkerplus.com

主人公はミコトだけれど、本当の主人公は遺体なのかもしれないですね。
ミコトは主人公である遺体にどんな物語があるのかっていうのを語っていく、ストーリーテラーなんですよね。

 なるほど!ってとても印象に残った一文。これを読んでから4話を見たので、ますます亡くなったお父さんの話だって意識しちゃいました。だから今回の主題歌の流れ方に対してもそういう意味で思うところがあります。
 ドラマをほとんど見ないのでそれが普通なのか分かりませんが、「今週のゲスト」という扱いになるのはいつも生きている人。3話をのぞいて、亡くなった人の身内です。アンナチュラルは生きることを語るドラマでもあるから、そのあたりを深読みしてしまいます。

優しい世界

 メディアや口コミで話題のフードを、わたしたちはその波に乗って、ただ幸せだけを求めて「食べたい」と思います。
 それはフードの流通に関わるすべての人の労働があってこそ享受できる幸福。それを忘れていたな、と。解剖依頼のお話のお供が「しあわせの蜂蜜ケーキ」で、亡くなった人は何の工場で働いていたのかっていう問いの答えも「しあわせの蜂蜜ケーキ」っていう……あのシーンが刺さった視聴者も多いのではないでしょうか。
 物語において食べ物という要素は正の方向に作用することの方が多いです。でも皮肉めいていたり、負の方向に作用することもある。それはそれで、わたしは好きです。食べ物を美味しいと感じること、幸せに思うことを強要される世界はよくない。そういうもん、なので。ですが、アンナチュラルのいいなあって思うところはそれを負のまま終わらせないところです。4話を通して「しあわせの蜂蜜ケーキ」に対する印象は決してわるいままではない。作ってる工場が従業員に過労を強いていて…というところではマイナスのイメージがついて商品に対するもやもやさえ生まれた。でも最初は疑われていた工場長は商品に愛情があり、従業員のことも大切にしたい、いい意味でプライドのある人で。「しあわせの蜂蜜ケーキ」がこの世界にあるのならば、ぜひ食べたいです。
 みんなで2000箇所のマンホールの中から事故の跡を探すところは、優しい世界だ~~~!と思いました。

 UDIの環境も優しい世界だなって思います。ああいう職場で働きたい(ド本音)わたしは絶賛シューカツ中ですが、白衣職への興味をわたしに取り戻させてくれました。本当に。一視聴者の将来を左右している…!すごい…!というかUDIの採用ページはどこですか…?!リ○ナビでUDIって検索しても出てこない世界なんて…(?)
 アンナチュラルはやっぱり日常ドラマの側面もあって、UDIかわいいー!っていう感情だって湧いてきます。女性の代弁者とも言える東海林さん、視聴者目線で悩める若者の久部くんをはじめ、わちゃわちゃ感が非常に好きです。医者以外は人間と思っていない両親に育てられた久部くん、ブログでなんかいろいろあってお金がたくさん必要になったからヤバイ週刊誌とUDIでバイト掛け持ちってことですよね。ひえー!久部くんと東海林さんの回もあったらいいなあ。

日彰医大の中堂系先生

 中堂さんって心がとてもきれいだと思うんです。ちょっと大げさな言い方かもしれませんが。坂本さんに訴訟されてそれなりに落ち込んでいるっぽいのも……ミコトのことをよく見ているっぽいのも…
 ↑の記事内語られている中堂さんの根暗な本質とは別の視点で、そう思います。それもかつての恋人だったり、それこそUDI、とくにミコトの影響を大きく受けているのかもしれない。まだ分からないですが。それに、きれいだなという感想は、中堂さんのああいう態度や性格と比べて生まれるものなのか……。何にせよしんどいお人だ~~!そして中堂さんの過去がとてもしんどそうで、この人のことを思うたびに、いっそ祈りたくなる。
 ところで3話の白いものも黒くするカラス検事の有罪率は99.9%、残りの0.1%はおそらくこの件なのかな。

 というかUDIの法医学者二人、ヤバイ人間には違いないとも思います。重たい過去も抱えている。だから二人のシーンはポエミーなのかな(?)抽象的な語りが多い。
-1話-

中堂「敵はなんだ」
ミコト「不条理な死」

-4話-

ミコト「どんな罪を犯したんですか」
中堂「罪のない人間なんているのか」

 二人はきっとお互いが他人事ではないし、通ずる部分があるはず。中堂さんにはミコトに攻略された上で、ミコトのことを攻略してほしい(ノットラブ)という話は何億回でもしたいです。

フォレスト葬儀社の木林南雲

 わたしは葬儀屋のことをあまり人間と認識していなかったので、マス…ミ発言やバーベキューを美味しそうだと言ったことや今回車に乗っていたことにいちいちヒエェ……って反応をしています。ちゃんと人間として生きてる…(そりゃそうだ)
 でもあんなにうさんくさい怪しい印象を受けるのにUDIラボの面々ににこやかに受け入れられていることにびっくりします。全部策だったりして…(何の?)まあ眼鏡かけてなかったら、爽やか好青年ですもんね。ビジュアルが。
 クランクアップっぽい画像を見つけたせいで早々退場するのかな…?!と思いましたが、他にもいろいろと辿り考えるうちに、やっぱり最後までいるのかな…?!とも思っています。つまり死ぬとか捕まるとかで退場の可能性もあるし、最後までちゃんと出るかもしれないし、そんな気が気でない状態でわたしはこれからこのドラマを追い続けます(しんどい)
 黒幕の可能性も捨てきれません。もしくは中堂さんのかつての恋人の身内説。お金欲しさだけで動いている人ではない、ということはなんとなく分かります。お金の約束って、口約束と同じぐらい効力がないとも言えますからね。とくに経済的に困っていない人は。でも根っからのクズかもしれないし…()ああいうミステリアスな風貌だし、予測の幅が広すぎる。木林さんの目的って……
 中堂さんの恋人が亡くなったのは8年前ですが、8年前の木林さんはなんと20歳です。彼にも20歳だった時があったんだ…って当たり前のことに感動しています。わたしは彼をなんだと思っているんだ…?!
 お父さんは健在なのか、それとも彼がフォレスト葬儀社の現社長なのか。それさえも分かりません。
 1~4話で、最重要ワードである「赤い金魚」という言葉を口にしているのは今のところ木林さんのみ。それだけ重要なポジションで、あんなに濃い存在感で、さらっと終わるとも考えられません。けれど贔屓目のような気もして、わたしには判断しかねます。
 ともかく、竜星さんめっちゃ好きだなってことは分かります。数年ぶりに連ドラを見るきっかけですし。かっこいいし!竜星さんの「人を愛する演技」とそれに伴う何かが好きなんですけど、アンナチュラルでは果たして見れるのでしょうか。どっちにしてもこれからまた楽しみです。


 アンナチュラルは生きることについて深く考えさせられるわけでもないけれど、たしかに心に何かをしっかりと残していきます。では「死」についての解釈ってなんだろう。このドラマは死をどう捉えているのか。ミコトと中堂さんの過去には死というものが色濃くこびりついている。個人的に、赤い金魚は「生」の象徴だと感じています。身体的特徴の比喩であるのか、エピソードに絡んだ実在する概念なのか。今後の展開が楽しみでなりません。次の日が休日でよかった…。
 今とってもしんどいながらに楽しいです。おかげさまで毎日アドレナリン高値。そういえば映画化の話もあるらしい!わーい!葬儀屋は出ますか!
 アンナチュラル、わたしにとっての数少ないバイブル作品になりそうです。

TVerにて4話配信中(一週間)
tver.jp

www.tbs.co.jp

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