壺の中の泉

きらめきたい

メサイア暁乃刻について、そのに。

副題、"悠久へと"
――あるいは幸せについて。
『テーマ:加々美いつき』

krgph.hateblo.jp
 こちらのつづき。おもに悠久乃刻へ向けた見解などネタバレ込みで。
 なお深紅ノ章の話をやたら持ち出しますが、舞台と映画が微妙に連動していないとか矛盾があるとかそういうのは分かった上での勝手な考察というか覚え書き。長い。

 ちなみに、そのいちの副題"メサイアという残酷なシステムおよび作品への賛美"について、「残酷な」は「システム」と「作品」の両方を修飾している。という余談。


▽加々美いつきと周辺人物
 まずはじめに、わたしは加々美いつきが果てしなく好きだ(何)元々金髪生意気キャラが好きな時点でお察し…それに杉江くんのいつきが好きなんだなあ、と日々しみじみ思う。
 そんなわたしの加々美いつきというキャラクターの解釈(とくに深紅ノ章)は、やんちゃで生意気でガキなところが多く子供っぽい、反面、修羅場での判断力などが異様に大人びている。子供っぽさと大人っぽさが共存しているキャラクター。

 そして今回、暁乃刻。過去にも触れると聞いていたので楽しみにしていた。加々美いつきめちゃめちゃ好きだって思った。好き。

・加々美いつきの過去
 幼い頃に両親を亡くしたいつきを育てたのはおじさんである雲井蓮=チェーカー。いつきは自分の手でおじさんを殺したと思っていたが、生きていた。チェーカーは死の偽装をして北へ渡り、プロジェクトネクロマンサーを進めていた。そしてチェーカーは自身の計画のためにいつきの脳内にマイクロチップを埋め込んでいた。

 いつきがどこか異様に大人びている理由が分かった。
 深紅ノ章で、「俺は一人で十分だ。死ぬ時は死ぬ」「俺、今まで一人で命がけで生きてきたんですよ」と言っている。「死ぬってことは力不足だったってことですよね。守れなかったってのも同じだし」だとも。いつきは"死"を知っているんだ。
 サクラに必要な資質は"深い絶望"である。幼い頃に両親を殺され、その張本人に育てられた。そしてそいつを殺した。(結果としては生きていたが。なんなら脳内にチップを埋め込まれている)

 志倉さんはどこまで知っていたのだろう?鋼ノ章にて。"加々美"と聞いて志倉さんはすぐに察した。いつきの両親は何者だったんだ?鋼を見た時は、一嶋係長の同期であるいつきのおじの名前とピンときての反応だと思っていた。おそらくおじ=雲井蓮のことも連想はしたが、"加々美"と聞いてまず浮かぶのはいつきの両親のことのはず。
 だから"加々美"の名前を聞いて、あのお家に起きた事柄を知っていて、チャーチへの入学を許可したのだろう。でも不思議なのが、加々美いつきという存在をおそらく片隅でも認知していながら放っておいたこと。歴代サクラは皆拾われている。深い絶望を抱える青少年を拾ってスパイに仕立て上げているのだ。酷だな!いつきは拾われる前に自ら志倉さんの元へやってきた。まあ忙しくてそこまで手が回らなかったとか、スカウトするより先にいつきが来ちゃったとか、だと思う。そもそも存在を認知していなかった可能性だってある。どちらにせよ、チャーチに自ら出向いて入学したというのは今までにない。強いて言うなら、悠里淮斗がかつてチャーチに接触したことをきっかけに五係が卵組を拾ったとか、そのくらい。

 おじさんのことを「もしかしてやばいことやってたんすか」といつきは言うけれど、いや両親を殺した張本人じゃないか…。いつきの"やばいこと"って何なのか。彼は幼い頃に両親を亡くしてチェーカーに育ててもらっているから、きっといろんな感覚が普通ではない。
 そういえば、いつきは暁の作中で一度もチェーカーのことを"おじさん"とは呼んでいない(3/16追記:面と向かっては。最初の動画に対しては呼んでいる)。説明するために"俺のおじさん"とは言っても。なんならチェーカーって呼んでいる。というか叫んでいる。(あのチェーカー!」っていう叫び方が好き)(3/6訂正:あのセリフ、今思えば「正気か!」だったような。チェーカーが「引くぞ」って言ったから)

 わたしはチェーカーが「いつき」と呼ぶのが好きだ。いつきに対する振る舞いが好きだ。どうあがいても育て親で、いつきのことを計画のための道具として見ながらも愛でていることには違いない、そんな感じが好きだ。
 考える余地が与えられ過ぎている。護に対して顎に触れて顔を向けさせる様を見ていつきに対しても残酷に優しく接していたのかもしれないなと思う。"一人で命がけで生きてきた"いつきとチェーカーの生活はどんな風だったのだろうと思う。それからチップを埋め込んだタイミングとか。チェーカーがいつきの両親を殺した理由とか。両親の葬式。雲井蓮の葬式。飴の話。

・いつきの復讐
 復讐には向き不向きがあるということをいつきは少なくとも深紅で知っているはず。有賀も。周を見ているから。
 その深紅より前に、いつきは自分の手でおじさんを殺したつもりでいた。ところが生きていた。だから「今度こそ殺してやるよ」と。(このセリフの時の殺気がすごく好き)
 いつきにとって自分の両親を殺した張本人(育て親)を殺すことは復讐なのか?
 有賀がチェーカーは情報を握っているやつだから殺すな、といつきを制するけれど、「加々美」と言うその声にはいつきのことを思っての意が含まれているのでは…というのはこちらのただの願望だけれど。
 チェーカーが「だから(悠里淮斗を)始末した」と言ったところでいつきは後ろを向いて座り込んでしまう。
 だってまさか、自分のおじさんが悠里さんを殺した、なんて思いもしない。このあたりではもう怒りでいっぱいだったのだと思う。
 もしも。あの殺意、衝動のままにチェーカーを殺していたら。いつきはどうなっていたのだろう?一度目は葬式にも出たらしい。これは二度目だ。

・幸せになってほしい
 加々美いつきは十分すぎるほどサクラにふさわしい生い立ちだ。幸せになってほしいな。何度も言うけれどメサイアという世界そのものがメリバだし"一般的な"幸せはもう手に入れられない。でも幸せになってほしいな。「チャーチに入れたことは感謝してる」いつきは、ずっと一人で生きていくつもりだったところを有賀涼というメサイアに出会って、きっと幸せへの一歩を踏み出している。マイナスで生きてきた彼にとってゼロは幸せなのだ。両親が生きていた頃はプラスだったのかもしれないけれど、その頃の記憶はもう褪せているとしたら。思い出せないとしたら。有賀が自分のことをメサイアだと思ってくれているなら悩みなんてない、と言ういつきは幸せを知りつつあるのかもしれない。つくづく残酷な話だけれど。

 別に根拠とするセリフや描写があるわけでもない超個人的な見解だけれど、いつきちゃんは雨が似合うなあ。でも、ずっと雨に降られていてほしくない。
 小さな女の子にキャンディをあげたあの日は、たしかに晴れていた。

・余談
 加々美いつきと雲井蓮の生活をハピツリっぽいコメディタッチの世界観で見てみたい。ハピツリ。すごいハピツリしてほしい。それ以上でもそれ以下でもなくただそれだけ。


▽有賀涼と加々美いつき

 互いに銃口を向けているの、卒業ミッションかよ…だんだんハードルが高くなっている証拠だと思う。
 BGMも相俟って名シーンだったなあ。

 護がネクロ淮斗に話しかけるシーンで、目を覚ましたいつきが有賀の腕に手を伸ばしているのが暁乃刻における有賀涼と加々美いつきのエンディングだったと思う。そして互いを名前で呼び合ったことで悠久へ繋がる。
 まだまだ二人の間には問題、わだかまりがある。いつきの脳内に残ったチップ(暁の後これを取り除くことは可能なはずだけれど、どうであれこれに関する彼の判断および思考回路がわたしは好きだ)とか、何より間宮のこととか。
 いつきにとって間宮は"有賀さんが殺したメサイアであり、有賀さんの大切なひと"といったところかな、認識としては。一方有賀にとって間宮は"人を殺すことに疲れていた自分を救ってくれた救世主"であることに変わりはない。いつきがどこまで知っているのか。このあたりを考えると有賀に厳しいメサおたくになってしまう。スパイの疑惑をかけられたりメサイアを殺したり縛られたり縛られたりそもそも生い立ちだったり、もういい加減幸せになってほしいのだけれど。

 この二人はいろいろ教えてくれた育て親を殺しているという共通点がある。アッもしかして神北さん、それを知ってメサイア組ませたの…?
 ここまで書いて、気付いた。有賀といつきには幸せになってほしい。そして現状、いつきを幸せにできるのは有賀さんだけだし、有賀を幸せにできるのはいつきだけなのだ。

・名前で呼び合う
 メサイアイーブンが基本だ。借りを作ったら、その任務中に返すことが原則。…と銅ノ章で語られていたけれど、その後この概念はあまり出てこず。
 けれどイーブンは暗黙のルールではあるのかもしれない。対等でなければならない。それでやっとメサイアになれる。
 有賀が"いつき"と呼ぶのは分かる。呼んであげてほしい。
 でもいつきが有賀を"涼"って呼んだことにめちゃくちゃびっくりした。それは想定外だった。まったく考えていなかった。とは言え、銅で語られた"イーブン"の原則を思い出して少し腑に落ちた。何より、そうあるべきだよなあと徐々に納得した。

・ラスボスはサリュートだよね?
 敵には敵の正義がある、意志がある。どんなクズでもどんな悪役でも。敵および悪役を魅力的に思えない作品がことごとく苦手(あまり出会ったことはない)なのだけれど、メサイアはシリーズ通して敵が好きだった。
 とは言え、クズだったり悪だったりするイメージが強い。北=絶対的な倒すべき敵というイメージ。
 けれどサリュートは違う。なぜなら「僕らは暁を知り、黄昏を超えて行く」と作品のタイトルを語っているからだ。
 "サリュート"は辞書によると"祝砲"という意味があるそう。
 サリュートは今後おそらく北の正義を描くためのキャラクターになるのでは…と思う。有賀とサリュートはお互い何かを感じ取ったのだろう。だって名乗るなって五条さんに聞いたでしょ?有賀ぐらいのスパイが簡単に敵に名乗るわけない。だから、よくあるあれだ。つむ鴨の斎藤と半次郎だ。
 サリュート北の諜報員養成組織「ボスホート」の人間らしい。ボスホートはいわゆるチャーチだとして、有賀とサリュートは同格だ。
 それにサリュートチェーカー=いつきのおじさんのことをまだいろいろ知ってそう。上から始末を頼まれたわけだし。
 あとどう考えても中の人の顔が似ていることを製作側が利用しようとしているとしか思えなくなってしまった。絶対そうでしょ!!!!!
 というわけで、悠久のラスボス枠はサリュートだよね?

 そういえば、"サリュート"も"ボスホート"もそれんの宇宙開発にまつわる言葉のようだ。"チェーカー"は宇宙開発ではなく警察組織。
 悠久の舞台は宇宙になるのかな…衛星の向こうは宇宙だ…(???)

・有賀のメサイアは感情が分かる
 間宮は音で人の迷いや嘘が分かる。いつきはにおいで。感情を表に出すのがあまり得意ではないだろう有賀にはうってつけだ。

 そして思ったのだけれど。
 護が平気じゃないことが分からないいつきではないはず。それなのに、「問題なさそうじゃないっすか?」って。有賀を気遣っての発言なのか、護がいつきにすら悟らせなかったのか、はたまた。

 においで感情が分かるいつきが有賀を何度か試そうとする。(あのおどけた風がすごく好き)
 その必要がなくなったら理想的なのかもしれないなあと心の片隅で思う。

・妙に彼らとだぶる
 メサイアを失い続けた珀と、珀がたった一人のメサイアである鋭利。
 メサイアを自分の手で殺した有賀と、有賀がたった一人のメサイアであるいつき。

 ちなみに。珀は留年、いつきは飛び級、わたしはそう考えている。
 有賀の「一人で抱え込むな」は影青翡翠あたりで珀が鋭利に言った言葉だし、暁ラストのいつき「行こう」翡翠の鋭利「行こう」と重なってしまう。
 あと有賀がネクロいつきを見つけて「加々美、しっかりしろ!」といつきをつかんだ(?)ものの、ネクロいつきに首を取られたのは翡翠で言われた"メサイアに心をとらわれたが故の失態"では?と思ったり。

 だぶるなあ…。彼らのように卒業できますように。ひたすら祈っているよ。

・悠久へ
 唯一無二のメサイアになってほしいなあなんて言っていたら井澤さんのブログ。

でも、映画で加々美いつきという存在に出逢い今回初めて舞台でメサイアとして一緒に立てた事が本当に奇跡のようで僕の中で唯一無二の存在になってくれた。

暁 | 井澤勇貴オフィシャルブログ「yuu-style」Powered by Ameba

 簡単に卒業できるなんて思えない生きてチャーチを出れるかも分からない、けれど翡翠ぶりに"メサイア二人の卒業ミッション"が見れるのではととりあえずわくわくでいっぱいだ。


 間宮のことを語るのは極夜を見てから。


▽嘘と本音
 チェーカー役の荒木健太朗さんがGyao!でのインタビューで興味深い話をされていた。わたしはアラケンさんの言葉選びと思考回路が好きだなと最近しみじみ思う。

「この作品に出てくる人間が皆、嘘と本音を繰り返している。どこまでが本音でどこまでが本音なのか。僕はあなたが僕のことを分かっていることを、僕は分かっていましたよ、の連続。その折り合いが一体どこでたどり着くのか」

 インタビューを見返した上で暁を見ると、おもしろかった。たしかに嘘と本音を繰り返している。サリュートチェーカー。チェーカーといつき。いつきと有賀。護もDr.TENも一嶋係長も志倉次長もきっとみんなそうだ。

 暁から離れて、鋼ノ章の話。いつきはおじさんのことを「突然死んだとか言われてびっくりした」なんて言っている。嘘だ。自分で殺している。葬式にも出ている。おじさんの遺言に従って志倉さんに会いにきたのにまさか自分が殺したとは言えない、ということだろうか。そういえば深紅で有賀に対して「嘘」だと言っている。「有賀さんは俺に命を預けるつもりなんてないくせに」と。
 そして暁では有賀の嘘にいらついている。においで嘘が分かるんだ。いつきと"嘘"はまた考えさせられるテーマだなあ。


▽再び、卵メサイアについて

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 ともるくんに関して語るのはわたしにはむりだ。すごいとかそういう次元ではない気がする。
 一羽の鳥になった、という部分を読んですっっっごい腑に落ちたというか、卵メサイアの果てはこれなんだな…!!!!!!って思った。割れるときは一緒だって言っていたけれど、もうそんな心配もないんだ。ずっと一緒。永遠という言葉がこんなにも裏切らない関係って何なんだろう。すごいな、メサイアってすごいな。(永遠=悠久と思ってしまったのはさておき)

 そういえば、ネクロにデータ=淮斗と護の生きた証を流し込む時に護が「思い出してくれ。春斗のこと、俺のこと」と語りかける。ここでようやく春斗の名前が出てくるの、一気に紫微へと記憶を辿らされる。春斗の存在を抜きにしてこの二人を語ることはできない気がするので、暁でこのタイミングで春斗の名前が出てきてよかったなあって。

 卵組のことは消化できたつもりだけれど、ふとした瞬間にぐるぐる考えてしまいそう。でもまあとにかく、二人はずっと一緒。悠久へと繋がったのだ。


▽周グエン衝吾

 正直言って、だいぶいやなやつだなあと思う。自分より上の人(志倉さん)にはピンとして、自分より下だと見定めた人(サクラ候補生とか)に対しては若干見下した様というかあまり態度がよくない。
 けれど志倉さんに対する姿勢とか、仕事ぶりは、嘘偽りないのだと感じた。ラスト、国防隊のやったことを有耶無耶にするなんて、と涙を流す。正義感のある子なんだと思った。あのシーンは国防隊に何も罰が下らない悔しさからくる涙が志倉さんと話しているうちに"もはや何故泣いているのか分からない"涙になっている。志倉さんが五係を「見限ってなんかいない」と語るところにも繋がっていて良い。そういうの、わたしが好きです。
 周グエン衝吾というキャラクターは伊藤さんが演じているからこそ憎めないどころかどこか惹かれてしまうキャラクターになっていると思う。特番のふわふわ感をわたしは忘れない。さっそくメサイアシリーズの役とキャストがリンクする性質がもろに溢れているなあ。

 志倉さんが国防隊の不正を暴きたいグエンに言った「血は争えないか」が気になって仕方がない。極夜でいろいろと明かされるっぽいので震えながら待っている。周家の罪とか公式が言い出してぼくはわたしは…。

 
▽ざっと感想(適当)

 たぶん随時追加。

・舞台美術がいい
 舞台セットが好き。スタイリッシュ!それに一度見終えてからは、あのセット自体が悠里淮斗に見えてくるのだ。だから常に舞台全体に彼はいるの。
 舞台美術がいい舞台はだいたい当たりだという説がいよいよ濃厚に。

・カーテンコール
 "カテコでの座長の顔"というのは今後どの作品でもテーマにしていきたい。
 東京楽のカテコしか見ていないのだけれど、ともるくんの表情はつむ鴨カテコのつねくんに似ていた。ともるくんのブログを読んで、それは絶対的に違うものだと理解したけれど。でも似ていた。晴れやかというか、何なんだろう…。

・一嶋係長と神北係長代理
 黒子にホウキで尻を叩かれた時の対応がこの二人の関係を表しているように思えた。わたしたちは黒子を介してこの二人を見ている。早く並んでください。

・"同期"
 護と有賀が銃を交換するの、最高に胸アツ。サクラの掟破りにならない?とか思ったこともあったけれど、そうじゃないんだ(何が)
 この二人の関係はそれこそ言葉にできない。好きだ。

・護、教育者として戻ってこない?

・Dr.TEN
 ラストの北の工作員を淮斗が乗っ取ることができたのは、Dr.TENが北でプロジェクトネクロマンサーのデータを元に開発したAIだからではないかとちょっと思った。
 あとはなんかもう、安里くんすごい。ハイネ楽しみっす!

チェーカ
 アラケンさん最高です。

・OPのいつきちゃん好きだよ
 好きだ。

・小暮洵と一嶋晴海
 OPの眼鏡に触れる仕草だったりラストの意味深なシーンだったり、絶対なんかある。今思えば一嶋さんも感情が欠落しているのでは?

・加々美いつきが最高に好き
 好きだ。


▽リアリティとは

 今作を見て杉江くんはすごいなと何百回も思っている。総じてすごいからどこがどうとか何を言っても何かが足りないのだけれど。
 まず前半でいつきの荒ぶる感情の変化、その繊細さ加減がすごいなと思ったのと、後半では"悠里淮斗を掌握したつもりでいるが実は僅かにその魂の破片が残っているネクロマンサーというインターネット上に棲む生命体"を演じているのがすごいなあと感動した。ネクロマンサーは死者達の声を代弁していると言うが、「愛故に人を憎み、愛故に人を殺す」というのは間宮のような人物の歴史から"学習"したのだろう。そういう演じるにあたり難しいであろうネクロマンサー。これを何ら違和感なく、絶妙なバランスで、見せていただいたと思う。あとネクロいつきの喋り方とか、廣瀬さんの演技の癖を取り入れている件について詳しい話を聞きたい。

 有賀に対しておじさんのことを隠している様子や、名前で呼んでくださいって有賀に顔を向けずに言うところ(超かわいい)とか、有賀を試そうとするところとか、繊細だなあって。かと思えば"悠里淮斗を掌握したつもりでいるが以下略"を演じたり、目覚めた時の様子だったり、最後に「涼」って呼ぶところだったり。公式プロフィールを見たら特技欄にパントマイムって書いてあった。超納得。

 それとリアル感半端ないなって話。おもに雲井蓮とのシーン。
 両親を殺された。その張本人を殺したと思っていたが生きていた。そして、「今度こそ殺してやるよ」と。
 健全な時間を生きる人がそういう血みどろな部分を演じるって、一歩間違えればリアル感に欠けてしまう。けれど、今作の加々美いつきからはリアル感で溢れていた。憎悪や殺意、そういうものが目の前にあった。…と言っても、配信でしか見ていないので画面越しで感じたことだ。生だとどうなるの?!悠久乃刻が楽しみだ。

 ところでそう、リアリティの話。わたしはメサイアシリーズをものすごい作品だと絶賛しているし賛美しているけれど、フィクションだと割り切っている。いろんなズレとか矛盾とか正確さとか、そういうものを割り切っている。だってそれ以上に人間ドラマが凄いからどうでもよくなるんだよ。
 そんな中でメサイアシリーズの役者の皆さんは回を重ねるたびに"目の前にある出来事"だと感じさせてくれる。リアリティがあるからぞっとする。
 杉江くんの加々美いつきがとんでもなく好き。もっと論理的に語り終えたかったけれどこれに尽きる。ちなみに刀ステのレポを読み返していたらわりとずおずおの話をしていた。戦闘狂って感じで好き!とか言ってる過去の自分に超頷いている。わかる。


▽ざっくりまとめ
 メサイアはいつもそうだけれど、今作もやっぱりみんなすごかった。語彙力がないのですごいとしか言えない。すごい。
 
 個人的には、杉江くんとあらけんさんに惹かれた。スタミュミュチケット難民(追加公演以外も一般先行やってくれると信じていたのにないからだよ。先に言ってくれよ。おこだよ)なのだけれど意地でなんとかしよう。杉江くんに関しては上記の通り。わたしの中では五本指に入った。そして片手で数えられるうちはDDではないって話を思いついた(どうでもいい)
 きっとわたしだけではないと思うので、こちらを見よう。

 あらけんさんに関しては最高だっていう感想しか出てこないのだけれど、うーーーん…こちら。
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 考える余白が多いのはあらけんさんによるものだと、そんな気がする。わたしの彼に対する好きは平野良氏に対する好きと一緒だなと、ふと思う。突然すぎるなと思ったけれど彼は堤嶺二だ。


▽極夜へと

 映画と舞台で微妙にズレが生じていることはメサイアシリーズを語る上で承知しておかなければならない。言い換えれば黙認。
 …と思っていたのだけれど映画と舞台では違うとついにキャストさんの口から直接語られた。誰だったか曖昧なのでそこは割愛。
 メサイアという世界が1ミリぐらい違って、でもこの二つの世界で紡がれる歴史は同じ…みたいな。その映画と舞台の違い=きっかけは林さんと八重樫さんではないかなあ、と。舞台で名前すら出たことないんだ。

 ところで、その極夜でおそらく様々なことが起こる。暁を踏まえた半年前の世界だとしたらいろいろと怖い。こちらが暁を知っているということを意図されて描かれていたら。
 いつきの「白崎さんまでいなくなっちゃたら、間宮さんに悠里さん、同期みんないなくなっちゃうっすね」の直後の世界。そういえば改めてあらすじを見ると有賀といつきに関して触れられていない。たぶんそんなに描かれないと思う。(そう思わないとしぬ)だってチャーチに二人きりじゃん?(違う)同期みんないなくなっちゃうとかいつきちゃん言ったけど、そうなった世界なんだな…。
 暁では悠里淮斗の失踪を元にすべてが繋がったけれど、極夜は「間宮レポート」により一つに集められていくそうだ。こわい。

 個人的には三栖と周の話、珀と鋭利が戻ってくるということで映画館に通う気満々なのだけれど平日でも行けるような立地の映画館で上映するかはまだ分からない。かなしい。

  わたしとしては大千秋楽で暁を知ることができたはずだが、まだ極夜を見ていない。暁を知った上で極夜に目を向けなければならないのだ。