古びた壁

脈絡なんてものは知らない

語る言葉は山ほどあるさ――舞台「つむ鴨」閉幕

「語る言葉はねえな」
「詩人じゃないのか」
「俺は生きていることを句にしたいのさ」

 大好きなシーンです。美しくってたまらない。



 舞台「瞑るおおかみ黒き鴨
 東京16公演
 大阪3公演
 北九州2公演
 全21公演
 お疲れ様でした。

 東京4公演北九州2公演、計6公演観劇しました。*1
 とにかく楽しくて幸せで、容保様の台詞を借りるならば本当に夢のような時間だった。思い出が出来すぎました。6枚のチケットの半券を並べて、大千穐楽で持ち帰ったあの花びらを置いて、余韻に浸ることしかできません。

 毎公演力の限りの拍手を、そして大千穐楽ではスタオベを、精一杯届けたつもりです。個人的に応援している人のことを言うとあんなに楽しそうなのもなかなか見ないので各方面すべてに感謝したいし、嬉しい。

 思うことが多すぎて、あれも好きだしこれも好き。考えることが尽きない。正直これ書いてる今も思い出し泣きしそう。
 
 前作「もののふ白き虎」はDVDで鑑賞しまして、16歳程度の青少年が例えば誠のだんだらに憧れてもののふとして美しく散る、ベタなほどに儚い物語だなと思いました。分かってても泣かされるよね。



僕達が出演した作品では、どの様な死に様を迎え白き虎となるか、に重きを置いていたのに対し、今作品ではどの様に生きて行くのか、ということを大切にしていた様に感じます。

――『瞑るおおかみ黒き鴨』アフタートークショー|松村龍之介オフィシャルブログ「之介道」Powered by Ameba


 今作は新選組会津、薩摩のそれぞれが描かれている。
 特に薩摩は前作では敵だった。けれどこのつむ鴨では当然誰も悪くない、それぞれの生き方にスポットが当てられている。この世界に生きた人物の"美学"が描かれていたように思います。自分にとって美しくあれる生き方を貫いた者たちの話。だから戦が起きるのかもしれませんが。激動の時代においてそれは必要なことだったのかもしれません。
 主題歌の「誇り高く散りゆくことで 鮮やかに咲く花であれ 尽きるまで」という部分が好きです。つむ鴨で描かれる人間たちの美学のようで。そして、人斬り半次郎の生涯をも思わされます。

 Twitterでも散々言っておりましたが、考えるな感じろの舞台だと思うのです。印象深く心に刻みつけられるので考えることは後からできる。あの世界あのお芝居を一瞬たりとも逃さずしっかり浴びることが先決だなと2回目観劇後気付きました。

 もうね、好きな場面が多すぎる。考え出すと止まりません。

 ところで大千穐楽スペシャル公演がスペシャルすぎました。二幕の途中までギャグ分量多くて祭りだなって思っていたのですが、クライマックス近くで追加演出というか追加シーンをズドンとぶち込まれる。スタオベしておいて終演後立てない歩けないとかいう意味の分からない感じになっていました。後述します。ひとことで言うとつむ鴨すごい(すごい)

 とりあえず大千穐楽を終えて今感じていること思うことだけ書き残しておこうと思います。たぶん半次郎さんのことばかり。長い。ネタバレわっしょいな感想です。

 東京公演後もいろいろ書いてました。
krgph.hateblo.jp



「「全然響かねえな」」

 開演時間になるとまだ照明が落ちないうちにシルクハットをかぶった村田新八(ですから時間軸は西南戦争)が上手からふらりと出てきて階段のところ(?)に座りアコーディオンを奏で始めます。これやっぱり君が代っぽいんですがどうでしょう?前にも書いたけど若干旋律が違うのは耳コピ(無茶)
 君が代だとして、それは新しい時代の現れだということでしょうか。でもまだ混沌の中。

 で、暗転して。障子に凭れるように座ってその音色を聴いていた半次郎が刀を持って立ち上がる。

 新八曰く半さんが(風琴を)聴きたいなんて珍しい、と。
 今思えばすごい死亡フラグだ!こういうのなんか知ってる!
 死亡フラグといえば、この後こんなやり取りがあります。

「西郷どんに顔出さなくていいのかい?」
「またいつでも会えるだろ」

 この場面はおそらく、西郷さんの「好きにせえ」という薩摩軍の解散宣言のあとで、斎藤に会いに行く前なんですね。つまり
 また会えるって空の上でじゃないですか…!!!と思ったけど半次郎さん多分西郷さんと晋介の死に顔見てる。うん…(泣)

 それで半次郎と新八が風琴を指して
 
 半次郎「相変わらず…」
 半次郎・新八「「全然響かねえな」」

 っていうところがあって。

 このやりとり(?)も含めてここのシーンで言いたいのは内容もだけれど、空気感。相性のいい役者同士の掛け合いって本当に観てて気持よくて。いや何様だよっていう感じではあるけれど、言わせてほしい。今回初めて斉藤秀翼さんをちゃんと知りまして(名前しか存じ上げなかったので)、また共演してほしいなあなんて思った。空気感ってやっぱり客席に伝わってくるものだしわたしはそのあたりすごく感じ取ってしまうし、仲の良いカンパニーの舞台を観るのが好きってお蔵入りになったブラメリ*2のレポにも書いてました。脱線した。なんだかとにかく空気感がものすごくよかったし、これ。


 納得した。そういえば半次郎にやられて瀕死の佐川と余裕綽々の新八がやり合うシーンも空気感いいなって思います。
 佐川に半次郎が一撃入れるところは言わずもがなですね。そういえば9/22マチネのこのシーンで、佐川さんの手から離れた白虎の鉢巻が半次郎の刀に引っかかったんです。き、奇跡だ…!!みたいな。その後の半次郎もよかったです。若干の間があって考えを巡らす(?)ようにその鉢巻見ていて、で鉢巻持ったままの殺陣。鉢巻で刀を拭ったりもしていました。で、佐川の方に鉢巻を投げやる。やっぱりこの人のアドリブが好き。って思った。まあ何やってもたいてい好きなんですが。

 ちょっと脱線。

 あとはこのシーンの最後に半次郎さんが「俺の…会いてえやつだ」って言って通路を歩いて行くとき雷がどーんって鳴るのかっこよすぎ。


 それから土方と斎藤→半次郎と斎藤のワンシーンが流れます。本編終盤でもあるシーンなので、ダイジェスト的に。
 この物語において半次郎と土方は主人公斎藤一にとっての二大人物というポジションなのかなって思いました。と言っても、"瞑るおおかみ黒き鴨"ですからこれは斎藤と半次郎の物語であるべき(って西田さんも仰っていた*3)なんですね。それで土方は?っていうと神かなってずっと思っています(そうじゃない)最後に半次郎が斎藤に、土方のことを「やっぱすげえよ」って言いますし。"主人公斎藤一がいて中村半次郎がいて、そして土方歳三がいる"というこの物語の人物構成をずっと感じていました。


 そしてオープニング。主題歌「雨上がりのまほろばで…」
 すごくテンションが上がります。曲も個人的に好きだし。本編のダイジェストのようなつくりなので、観劇4回目あたりからオープニングで泣きそうになる事態発生した。周りもけっこう泣いてる。
 あとセンターで土方が島田から誠のだんだらを受け取って羽織、刀を抜くと障子が開くという演出がかっこいいのなんの。それで開いた障子の向こうに半次郎がいるんです。土方とやれる、強い者を相手にした時に見せるあの笑いの表情で。
 土方は半次郎に向かって走り出すんですが、半次郎は笑ったまま後ろにふわっと消えていきます。同時に土方は撃たれて死ぬ。

 東京公演後にも書きましたが、スペシャル公演をもっても解決しなかったのがこの演出です。
 やっぱり続編の主人公は土方…???

 物語は時間を行ったり来たりしながら進みます。メインは戊辰戦争西南戦争。思いのほか戊辰戦争の割合が大きく、戊辰における薩長もかなり描かれていたのが嬉しかったです。
 戊辰での出来事も経て、二幕後半は西南戦争の集結へと進んでいきます。怒涛のように死んでいく薩摩がつらい(言い方)


▽斎藤と半次郎の出会い

「死体があんだろ?なら早よ行けや」
「中村様…!!」
「なんなら!ここでお前らを同じにしてやってもいいんだぞ」

 1回目上から観た時、これは下から観たいやつだ!と思いました。半次郎はふらふらしているし下を向いている時が多いし、なにより、油小路で伊東先生が殺されましたって篠原泰之進らが薩摩藩邸にやってくるシーン。
 舞台セット的に、半次郎が上から見下ろすように御陵衛士の残党を蹴散らすんですね。
 下手前方席が最高です。ほんとに。下手前方は2回観たけれど最高としか言いようがない。

 ところで、御陵衛士に送り込まれた間者として斎藤一の名を聞いた時の半次郎さん一瞬笑うんです。あと、
「その斎藤一ってのを見抜けなかったのはおめえらの落ち度だろ?」
 って。このため具合とか言い方がとてつもなくよかった。好き。

 でも、敵を欺くにはまず味方から、です。半次郎さんいわく。

 場面転換して、油小路。伊東先生を迎えに来た御陵衛士を斎藤と島田が片付けているところ。後の油小路事件です。

「土方ってやつはいねえのか?」

 と、半次郎が乗り込んできます。超かっこいい。
 音響照明も相俟ってすごくかっこいいです…テンション上がる…

 それで斎藤と剣を交えて「あんたが土方か?」って。まあ違うんですが。
 土方が現れて、斎藤「あんたに用があるみたいですよ」半次郎「じゃああんたが…!」といった感じ。

 「芸妓の間じゃ持て囃されている」と一番人を斬っているという土方の名前を聞きつけて、土方に会ってみたくて、そんな中で出会ったのが斎藤。
 二人ともピーク目前バリバリ現役!みたいな時なんですよね。
 たまたま出会った二人の人斬りはお互い通ずるものを感じたに違いありません。

共闘
 物語の最高潮じゃないですか。めちゃくちゃ好きです。高まる。このシーンの美しさについては一時間は余裕で語れると思う。いやそれ以上かもしれない。逆に語れないかもしれない。


 戊辰戦争で半次郎は土方とやり合う機会に恵まれます。そこには斎藤もいて。
 ところがその最中に土方が撃たれる。結論から言うと撃ったのは(おそらく大久保さんに命じられた)大山です。

 だから半次郎は大山を殴る。「どうして土方を撃ちやがった!」と。そして、「だったら旧幕府軍につく」なんて言っちゃいます。反抗期ですかね(違う)
 結局山縣さんのもとにつくんですが。そんな状態で戊辰を戦う半次郎は、ボロボロになって戦う斎藤に出会います。会津藩が降伏を決めたあとのことです。

 これからとてつもなく美しいシーンが始まります。

 斎藤に半次郎がそっと剣を向けて「みっともねえな。いつもの飄々さはどこにいった」
 ここからもうすごくきれい。
 ぼろぼろの斎藤と、故郷と衝突してしまった半次郎。

 半次郎は斎藤を斬ろうとする新政府軍に楯突いて斎藤を死なせまいとします。
 真ん中で斎藤が倒れていて、その背後に半次郎がいて、八方から襲いかかる赤い軍服の刀から斎藤を守る半次郎。

「こいつはオトモダチだ」
「このままじゃお前、死んでしまいそうだから」

 死にそうなんて言われた斎藤はふざけんな!って感じで立ち上がります。すると半次郎はそう来なくっちゃ、という風に笑う。
 そして新政府軍を相手に共闘するんです。

「語る言葉はねえな」
「詩人じゃないのか」
「俺は生きていることを句にしたいのさ」

 えっじゃあ死ぬ覚悟なの!?って思ったけど、そんなの考える必要もないな、と。それくらいこのシーンは美しくて。
 ひとしきりやり終わって、二人で笑って倒れるのです。

 半次郎と斎藤はただのオトモダチだった。相容れなくて、でも通じるものがあって。お互い気の合う友人だった、けれど奇しくも敵同士だった。敵同士だったからこそかもしれないね。なんで新政府軍に楯突いて斎藤を守ったのか、とか考えたくなるけれど、この美しい景色を見ていればどうでもよくなる。ただそれだけ、なんです。オトモダチ。ただそれだけ。他に理由なんていらなくて。だからって美しい友情の物語かと言われればそうじゃない。やっぱり、ただそれだけなんです。

 最高に美しいこのシーン。わたしは一番大好きなシーンです。

 途中でこの共闘がスローになって、後ろで西郷さんと山縣さんの会話があります。
 山縣さんは「おもしろき こともなき世を おもしろく」と親友高杉晋作の句を引っ張り出して「調印は半次郎にやらせる。それが痛みを知っている者をおさえることになる」と。句のことはわたしには分からないので()解釈しようがないですが。でもなんだかここも含めて半次郎さん若いんだなって思いました。これは後述します。


▽大千穐楽
 すっっっごかった。スペシャル公演。
 まずは21世紀にまだ大学生をやってる身で内海さんの生ローラースケートを見れるとは思わなかった。ありがとうございました。

 そのぐらいなわけなかった。スペシャル公演がスペシャルすぎる。あと城の受け渡しのシーン追加されましたわ毎度恒例願えば叶うもの…。

 一幕から二幕前半にかけてはギャグの分量が多くて。もともと笑いどころな部分はパワーアップしていて、それにとどまらず戊辰と西南での薩摩の号令シーンは2つともアドリブぶっこまれていた。いいの…?って思ったけれど二幕後半の追加シーンがすっごくてなんだかんだギャグとシリアスのバランスはまあよかったのではと思います。こわいぐらい吹っ切れてた。


 だいたいこんな感じです。山縣さんは頭に羽根つけてローラースケートで踊り出すし出てきた瞬間劇場がまるでライブ会場でした。ガラスの十代はフルでした。楽しかった…。
 その後の山縣ガラスの十代を踊ってしまったこの方こそが明治新政府の頭なのだ」とか山川「僕もローラースケートで踊りたいです!」とか、斎藤の書類が片付かない大久保さんに対する「踊らなければ間に合ったんじゃないですか?」が「感動しました」になってたりとか。あとローラースケート山縣さんが再登場したりとか。
 これだけやったらスペシャル公演はDVD収録ないだろうなって思いました(笑)

 書き出せばキリがないほどのお祭り騒ぎなスペシャル公演。半次郎さんもいろいろやっていました。
 アドリブをあんまり見たことがなくて、7月の僕が原でとても自由にやっていたらしいのを聞いて今一番見たいのはそれなんだ…!!!って一人悔しく思っていましたが今回かなり見れたのでよかった。
 戊辰での号令シーン。大久保さんが「西郷どん」って言って西郷さんが囲碁盤(?)を勢いよく倒して「行けやー!」って言うのですが。スペシャル公演では「えっ?なに?」ってずっとすっとぼける。本当になかなか進まないので半次郎が「行けや、って言えや」って小声で。ところがIKEA?家具?ニトリの方が好き」とか言い出しちゃうしww半次郎も「まあ安いけどな」とか言っちゃうし。あのターンはなかなか長かった。
 それから西南戦争での号令。晋介「西郷様、」と言うけれど半次郎が「この人は号令をかけねえよ、もう」からの新八「なら半さんの句でいいんじゃないすか」って言うのがいつもの流れでした。
 それが西郷さんが「晋介、座れ!」とか言い出して。「どうもすいませんでした」をやる流れになって。半次郎さん「こわいだろ、先輩こわいだろ」とか「かわいいからって何でも許されると思うなよ」とかめちゃくちゃぶっこんでました。
 なんとか「この人は号令を~」に戻るんですがここで新八が「なら半さんが謝ればいいんじゃないすか」って。「あとで覚えとけよ」と言いつつもちろん半次郎さんもやりますね。そのあとでがすぐのことで半次郎に促されて新八もやります。薩摩団体芸でした…
 これじゃあ「夢、」に続かないしどうするんだろうって思っていたら新八「では半さんの句でお願いします」ってきたのでおお…!ってなりました。やっぱりまた共演してほしいですね(脈絡とは)

 どこまで打ち合わせなのか分かりませんが、西南の方は座れって言われた晋介が「!?」ってなっていた気がします。あれは完全アドリブだったなあ…
ともあれ、半次郎としてアドリブをたくさん見れてよかったです。今作は笑いの部分に限らずいろいろな対応見れたのがよかったなあ。自分の目で観た中では前記事にも書きましたが東京公演での手紙がちゃんと破けなかったところが好きですね。あの若干突っ走ってるアドリブが好きです。

 そういえば新八さんの髪型が大楽だけ変わってました。右に後れ毛を作っていた。ストレートがかかっていたので新八さんの地毛は天然ストレート…って思っていました(?)


 そして、追加シーン。新選組会津、薩摩の三連チャン。
 斎藤が島田に「土方さんの最期を教えてくれないか」と言って始まる新選組の3人が作中で唯一舞台に揃うシーン。
 土方は島田に「生きるために笑え」と告げて、いつもはそこまでなんですが、大楽では続きました

 土方「斎藤に会ったら伝えてくれ。俺はうまく笑うことはできないが、お前のおかげで楽しめたぞ。」

 …と。
 話を聞き終えた斎藤は島田に西郷さんから預かった大久保さんへの手紙の返事を授けます。そして、大楽では。

 斎藤「島田くん、ありがとう」
 
 客席がボロ泣きでした。これに終わらず、続いて佐川さんが下手から出てきて。

 斎藤「聞いてたのか」
 佐川「ああ」
 斎藤「生きてりゃこういう言葉を言うこともある」

 佐川は斎藤にあることを話します。

 山川を前線から外したい

 「俺が言うのもなんだが、親兄弟を失うというのはつらいもんだ。だからあいつは、生かしたい」

 佐川さん、最後までさきを想っていて。同時に山川のことも。でもだからってそれを聞いた山川は素直に前線から外れたのかはまた別の話ですね。会津二川は本当に日に日に儚く重くなっていた。わたしは薩摩びいきだからそこまで語ることはできないけれど、二川のねじれた距離感がねじれたまま引き合うのは、つらかったです(好き)
 そして、

 「今日は嘘なき一日にしよう」

 と。


 追加シーンはまだ続きます。
 半次郎と容保様。

「城の明渡人はお前か」

 分かってたけれど、容保様のこの言い方を聞いて改めて半次郎の若さを知った。
 あとですね半次郎さん出てきてからあんまり内容の記憶がないんです。しっかりお芝居を観たくて今まで涙で溢れる心を鎮めてスッと態勢を直したものの、そうしてたら余計にだめでした。

 容保様、半次郎に「お前にとって明治とは、新しい国とはなんだ」と聞きます。半次郎は、

「西郷どんも大久保さんもどっちもかけちゃならねえ」
「西郷どんと大久保さんが俺にとっての句だ」
「西郷どんと大久保さんは輩で、俺はただの小僧だ」

 などと涙ながら容保様に語ります。けっこうな頻度で「小僧だ」って自称していたのが、この世界における中村半次郎の若さを物語っていた気がします。
 この泣き方をするのは初めて見ました。わたしが観ていない中ではあったと思うのだけど。静かに涙を流すのしか見たことなくて。
 この一回きりのお芝居だったからこそのドキュメンタリー感。特に半次郎さんは泣きの演技が演技している感じがしなかったです。限りなく素に近いお芝居というのでしょうか。言葉をつまらせながら。
 もとよりDVD収録日に昼夜で涙の流し方を変えてみるお方なので*4、これもいい意味で作られたものだと思うとたいへん恐ろしく思います。やっぱりすごいなあ…好きな芝居をするとかそういうの抜きにして天才だなって定期的に思わされます。
 あと作中で半次郎さんがこんな風に泣くのはなかったし想像もできなかったですよね。半次郎さん、想いをさらけ出すとか、そういうところ絶対に見せないだろうから。とくに薩摩には。これについては、容保様すごい。会津藩どころかもののふシリーズにおける殿様だわ…。

 そして容保様が泣いている半次郎の背中をバンッと叩いて「失うことの怖さを知ってるんだな。そういうのをなんて言うか知ってるか?」「"夢"って言うんだよ」

 半次郎が最期に斎藤に託す句「夢、」がここから繋がっていたのです。半次郎にとっての夢。それは西郷どんに大久保さん、それに薩摩。半次郎には明治も新しい国もなくて、西郷どんが、大久保さんが、薩摩が、すべてだった。
 「夢 瞑らないまま まほろばまで」というこの物語の一句が、この物語を生きた人間たち皆の想いを連れていったな、と思います。容保様に教えてもらった夢というものを、半次郎の夢、薩摩という夢を、託された斎藤が生きる。
 前作もふ虎は救われないにも程がありましたが、今作は皆報われたと思います。あっでも会津二川は別…
 
 大千穐楽はきれいな世界でした。皆さん吹っ切れていて、これがこの人間という答えがそこにあって。


 カーテンコールは4回だったかな。最初の挨拶で青木さんが「狼と鴨からひとことずつ」ということで挨拶も聞けたのがよかったな。なんだかんだ一回も挨拶回に遭遇できなかったので…
 「土方さんの"生きるために笑え"という台詞にたくさん学ばせてもらった」と仰っていました。あとはなんだか挨拶が素晴らしかったことしか覚えていません(おい)
 スタオベを届けることができてよかった。
 拍手。わたしたち観客が直接できることは、確実に伝えられる方法はこれしかないんです。だからわたしは拍手にこだわっています。銀劇は空調が程よすぎて汗かきますね!3日の夜はとくに拍手が鳴り止まなくて、ずーっと送り続けていたので(笑)
 カーテンコールでの青木さんの晴れやかな顔が毎度忘れられません。初座長公演、おめでとうございました!

 終わったあとにね、前方席の皆さんがこぞって花びらを持ち帰っていました。わたしも、一枚。
 つむ鴨には思い出ができすぎた。それを一枚だけでも形に残せるなら、と。


中村半次郎

 レポは終わりと見せかけて終わりません!もう少し続きます。
 前記事で"この世界における中村半次郎とはなんなのか"なんて言っちゃっていますが、このあたりについて。

 9/22の北九州公演を観て、これが答えかあ…と思いました。
 吹っ切れていた。気持ちいいぐらいに。最期の「飛べりゃなんだっていい」「これで飛べる!西郷どんまで!」が本当にスカッとするというか潔くて聞いててそれこそ気持ちいい。あとやっぱり半次郎として楽しそうだなと、、伝わってくるものですね。
 初日からすべて含め、板の上で生きる人なんだなあと思わされた公演です。

 東京公演後の9/13にお誕生日を迎えられていて、北九州でそういう部分を感じることもありました。
 東京公演でよく思っていた子供っぽさとか無邪気さは薄れていて、しっかり青年になっていた北九州公演。こういう計算ではどうしようもない微々たる影響はじっくり観ていると分かるもので、25歳最初の作品…なんてしみじみしていました。
 その幼さがなくなったからこそ、余計に"小僧"感が際立っていたとも思います。そして追加シーンのおかげでますます。

 大久保さんに「尊敬している」という台詞がありますが、どうしてもかぶるんです。なんかインタビューとかでよく聞く気がする。
 あと大楽追加で連発していた「小僧だ」っていうのも、ものっっすごいデジャヴ感じた。

 「瞑るおおかみ黒き鴨」における中村半次郎はかなり若いなあと思います。けれど人斬りですもの。あの狂気と貫禄だからこそ西郷さんの隣にいたんじゃないかと。史実では右腕ですもんね。
 そういえば西郷さんが撃たれたと聞いて「せごにい…!!!」と叫ぶ声が楽日はひたすら悲痛で。これも吹っ切れてる…!って思った。だからこそ余計に痛々しかったです。
 半次郎の若さは当て書きなのではとたびたび思っていました。時折感じたデジャヴとか、全体通してあの世界において、強くそう感じます。

 狂気と貫禄の人斬り半次郎薩摩藩士によく慕われています。人柄かしら?となるとやっぱり当て書き…と思ってしまう贔屓目。
 というよりはマッチしているんだなあと思います。他の誰が演じてもあの中村半次郎は存在できない。脚本から離れて役者が演じて一人の人間として物語の中で成立する。今作は特にそう思わされたので、逆に台本くださいって思いました。もともと文字として言葉としてはどうだったのかが知りたい。絶対おもしろいと思うんだ…。
 そう、だからこそのつむ鴨における中村半次郎は、あんなに愛されていたのだと思います。
 
 そして殺陣。やっぱり好きだなあ…って思う。流れるような綺麗な中で重みがあって、あと今回は西田殺陣ですね、やたらくるくるしていました。よかった。今になって思い出したんですが、そういえば左利きだ…完全に忘れていました。
 全体を通してさおとめゆっくん演じる山川の殺陣は一番すごいんですが(あんなに太刀筋が弧を描く人初めて見た)、誰と誰の、と言われると半次郎と土方の殺陣が一番すごかったと思います。贔屓目なしでもたぶんそう。ベストオブ髪が乱れる殺陣じゃないですか?(?)半次郎のエクステが取れたり土方さんのオールバックは乱れたり…()とにかく速くて激しくて圧巻でした。


 つむ鴨は観れば観るほどみんなが愛しくて仕方なくなる、そんな物語でした。新選組会津も、薩摩も。あと若干心奪われかけている山縣さん。半次郎さんに関しては中毒性高すぎて。大好きでした(号泣)
 本日9/24は西南戦争集結の日。西郷隆盛中村半次郎村田新八別府晋介の命日です。黙祷。
 だから今日中にこの記事を上げたくてぱぱっとまとめているので思うところはまだまだたっぷりです。共闘シーンの美しさについて書けたので満足ですが(笑)語るべき言葉は山ほどあるさ、です。たぶんちょっと意味は違うけれど。
 今の日本の礎とも言える人間たちの生き様が描かれた今作は忘れられないものになりました。楽しかった。幸せなひとときを、夢のような時間をありがとうございます。

 終わってからもキャストさん達がまだまだSNSで活発なので思い出し泣きが激しいです。
 そしてこれ。西田さんにはあいついいよね判定があると勝手に思っています。あんどれ公演観たい。おねがいします。さいとうしゅうすけくんもあいついいよね判定もらっていることは事前特番で知っていますだから再共演(しつこい)
 新八さんは全公演通して一番磨かれた人かもしれない。「悪いが、敵は敵だ」という白虎を斬るところでの台詞、北九州ではあの鋭利さに磨きがかかっててキンキンしました。あのシーン、かわいこちゃん晋介も白虎をぐさって殺るんですよねえ。薩摩…って感じでした。
 薩摩が揃うシーンはいつも心が荒波です。薩摩が愛しくてしんどい日々でございます。

 追いかけ続けて1年と10ヶ月近く、半次郎さんはひどく中毒性が高くて惹きつけられる役でした。抜け出せなくて曇天のDVDが届いているのに本編がまだ見れそうにない。
 次のチケットはまだ取れていません。ミュージカル「花・虞美人」はまさかすぎる落選。がんばります。早く劇場にふらりと行ける場所に住みたいものです。
 個人的な次の予定は刀ミュでございます。キャスコ推しとしては行かざるを得ない地元公演。


 もののふシリーズの世界に触れるきっかけになったのはやっぱり凌くんなんですよね。だから感謝しかないのです。いろんなものを見せていただいている。新鮮な日々です。
 つむ鴨以降最近は"飛ぶ"がキーワードになっているのがなんだかうれしい。無論、ついていきます。だって、しあわせだもの。

*1:9/2~5夜、22昼夜

*2:m-bmp2.com

*3:youtu.be

*4:Kステ第二章DVD発売イベにて。昼は涙を一粒だけ、夜はだーっと泣いてみるという試みをしたそうです。どっちが作り手からすると感動を与えられるのか、と。