古びた壁

脈絡なんてものは知らない

舞台「瞑るおおかみ黒き鴨」東京公演

 瞑るおおかみ黒き鴨――つむ鴨、ひとまず東京4公演観劇おわり。

 今回初めて通うということをしました。
 北九州公演もあり、夏休みで東京へも行けるということで。何回も観ることに大きな価値がある作品だと今思います。

 台風のおかげで帰りの飛行機を1日遅らせることができたので、予定よりもう1公演増やせてよかったです。
 その増やした公演というのが9/5なんですが、これがとんでもないものでした。

 私事ですがこの日は本来福岡へ帰る予定だったので朝から品川で8時間以上時間つぶし。いろいろあって身なりぼろぼろだったんで精神的ダメージがきつかったです。せめて身なりがしっかりしていればよかったんだけど…外では背筋を伸ばしていたい方。アイロンのかけられたシャツをピシッと着てるオフィス人間達がスタスタ歩いている中でくたびれた女子大生がトランクを引くのはつらい。つらすぎる。
 そんなコンディションで19時開演に挑んだのでちゃんと観れていたか不安ですが、この公演がいつもとまたかなり違う公演でした。7公演目ということで追加演出や変化も多々あり。

 さて、本日は休演日ですし北九州公演前の自分用メモとして9/2~9/5の夜公演を観劇しての気付きや変化などだけまとめます。ネタバレ満載。
 ひとつひとつの言葉が深く心情としての情報量が膨大な作品なので思うところが多く考察厨は考えることもたくさん。とりあえず今の段階での解釈も交えつつ。詳しいレポ感想は全部終わったら改めて。

 そしてやっぱり松田凌さん演じる中村半次郎に寄って観てしまうので半次郎びいきです。
 半次郎さんのビジュアルとキャラクターがとてもツボ。今回はわたしのツボにはまるキャラクターではないだろうと踏んでたんですけど…回を重ねるごとに中毒性が高まります。

 1回目(9/2)観劇後の一気にいろんなものが押し寄せてくる感じ、あの怒涛のような2幕を終えたあと初見時はまず立ちあがれない。2幕の中盤あたりからああこれは立てないなあ…って(笑) この日はアフトーがあったので助かりました。
 それで1回目後にぐるぐる考えてどこに落ち着いたかというと、
 この世界における中村半次郎とはなんなのか。
 次からは例のごとく定点カメラをきめようと決意しました…。

 半次郎はなぜあんな風に笑うのか?
 半次郎の強さとは?
 薩摩のみんなにとって半次郎とは?
 斎藤にとって半次郎とは?

 とかいろんな疑問だらけでした。会津サイドについてもいろいろと。分かったこともあるしまだ分からないこともある。

 ちなみにそれで3日夜めちゃくちゃ考えながらほどほどに定点カメラきめてたらますます混乱したんですけど、この日のカーテンコールを見ていたらだんだんいつもの"やっぱこのひとすごい"が湧いてきて、このお芝居を観ていられることに幸福感を感じていました。
 中村半次郎ってすごい。今回は、中毒性が高い、これに尽きます。


▽追加演出とか
 同じものを観て一瞬たりとも飽きないって相当すごいですよね。役者の演技に些細な変化がその場で生じたり、または追加演出のようなものがあったり。
 戊辰戦争で山川の「全軍、壊滅です」からの白虎の自害を受けて大泣きする佐川。悔しそうに地をがんがん殴るんですが、9/3だけは天を見上げる割合が大きかった。
 9/4夜は全体的にスカッとしていた。メモに佐川さん以外と書いてるんですが、そうみたいです(投げやり)

 前作同様で回を重ねるごとにいろいろと増えていく。
 最初の2回が上からで9/4にようやく1階席だったのでだから気付いたこともあるかも。

 佐川とさきと勘の鈍い男山川のシーンで、さきが佐川の腕に抱きついて離れたあとに佐川がその腕を匂っているのは気付いている方も多いようで(笑)初日あたりはなかったですよね。ここはおもしろいです。

 会津もいろいろと増えてるのかとは思いますが、、
 薩摩が日に日につらくなっていく。

 9/5夜公演。下手前方席で気付いたんですが、西郷の切腹介錯した晋介が後を追って自分の腹を切るときに「半にい」って言った…気がしました。マイクは通ってないです。何か言っているのには違いない。でもたしかに「半にい」って言っているように見えました。

 このあと半次郎や新八らがやってきて笑い合う薩摩のシーン。
 個人的に今作のしんどい場面トップスリーです。

 西郷と晋介のもとに薩摩のみんなが集まってきて半次郎が脱いだ羽織を藩士が受け取る。そして大久保さんの周りに集うところで…9/4夜まではその羽織を持ってるだけでした。ところが9/5夜公演では藩士の一人がその羽織を着て他の藩士とふざけ合うように笑っていて。
 それにこのシーンでは半次郎が晋介と顔を合わせて笑っていますが、ここもだんだん距離が近くなっているというか…ある回からは頭を撫でていましたし。
 セットが上の方なので真っ暗な中で照明が当たって笑い合う薩摩が浮かび上がっている。そしてだんだんフェードアウトしていく演出がつらくて仕方がない。こんな薩摩もあったんだなあとかどうして違えたのだろう…とか、とか。

 贔屓目かもなんですけど、
 半次郎さんかなり想われているよね。
 西郷、大久保、山縣らの半次郎に対する思い、新八や晋介をはじめとする薩摩藩士からもすごく慕われていて。

 この調子だと北九州公演はどうなっているのやら…(笑)

▽山縣からの勧告状を読み上げる半次郎
 西郷への自決勧告状の中身は「生きろ」でした。これを半次郎に読ませるんですが、この読み方が毎公演微妙に違って。
 あと1階席だからこそ分かる部分もあった。9/4夜と9/5夜が1階席でしたが
 9/4夜は2日3日と同じで言葉は強く読んでいた気がする、でも涙目だったような。1階席だったから気付いたのかな。
 9/5夜はかなり違って驚きました。もっと弱々しくてフェードアウトしそうな感じ。絶望さえも感じる。
 しかもこの日はそのあと晋介に勧告状を渡すときちょっと乱暴でそれからしばらく目つきが鋭くてどこか睨みつけてるみたいでした。

▽舞台は生モノ

ameblo.jp

 9/5の公演について。
 この日わたしはコンディションが良くなくあまり集中できぬまま観ていて、会津のシーンで歌詞と照らし合わせてみたらキツすぎて絞り出すように涙を流したりしてました。(心では泣いていても物理的に涙が出てこないタイプ) わたしのコンディションが良くないだけでいつも通りの新鮮味が舞ってるような公演だと思っていました。
 ところが、結論から言うと半次郎のお芝居があまりに違った。
 千秋楽で変えてくるという話はよく聞くんですがいやまだ中日だし!みたいな…凄まじくて逆に涙引いた。
 
 そういえば特に1幕で口に手を伸ばす仕草が目立った気がします。3回ぐらい。戦闘中とかなんか興奮してそうなとき(?)癖なのかな。

 1幕の終盤あたりで、ん?って思う部分はありましたが明らかに今日は違う!どうしたんだろう!?となったのが2幕の斎藤が自決勧告状と大久保さんからの手紙を西郷のもとに届けにくる場面。
 あんた、新選組か?って言われた斎藤が「そうだ」って答える。半次郎はこの時の斎藤を時折笑いながら見ている。少なくとも2日~4日の夜公演はそうでした。しかしこの日は一切笑わず目つきが鋭いまま。

 そしてこの回ではちょっとしたハプニングが起きて。
 西郷が「半次郎」って言って、半次郎が大久保さんからの手紙を足で踏みつける、で西郷が片手で手紙を破る。ここで手紙が破けなかった。
 そうしたら西郷が自分でビリっと破ろうとしたんですが、そこを半次郎が上からちぎるんですね。でそのあと西郷がさらに半分に破いた。
 二人で破くことに意味があるんだと思いました。
 これにとどまらず、半次郎がちぎった手紙の欠片を斎藤の方に投げ捨てていました。いつもは半次郎が手紙の半分を持ったままなんですが。斎藤を見る目はやっぱり鋭く。
 すごいなあって客席で感動しました…この日はなんだか圧倒されっぱなしだった。

 それから最後の一騎討ち。

斎藤「これからお前の思い出が始まるぞ」
半次郎「ならば消し去るまでだ」

 香水を頭からかぶるんですが、それこそ全てを洗い流すみたいに浴びる。思い出も故郷愛も自身の生涯すらも。
 覚悟にブレがない強い表情で香水をかぶるんです。しかし5日だけは着の身着のまま丸裸、みたいな…(伝わらない)よくドラマでいろいろと訳ありな男がシャワーを浴びるシーンがありますがあんな感じ(例えがひどい)なんかねどう言葉にしていいか分からないのだけど、4日までは顔に出ていなかったものが5日には出てきたのかな。
 あの表情が忘れられません。最後の東京公演ですごいものを見せられたなあって。

示現流
 中村半次郎示現流薩摩藩を中心に伝わった古流剣術)の達人だったと言われています。
 示現流では顔の横あたりで構え、刃先が地に対し垂直で天に向いている。…というのを5日の開演前に調べて知りました。意識してみると薩摩側は皆その通りで感激しました。そりゃそうかって感じだけど改めて見るとやっぱりですね…!

『一の太刀を疑わず』または『二の太刀要らず』と云われ、髪の毛一本でも早く打ち下ろせ(『雲耀』うんよう)と教えられる。初太刀から勝負の全てを掛けて斬りつける『先手必勝』の鋭い斬撃が特徴である。(示現流‐Wikipedia

 初太刀のあと刀が地に対して並行で低姿勢になるのも示現流だからのようで。
 これを知ってからみる西郷戊辰戦争を集結させるー!」の絵面はぐっときます。

▽今の段階で
 「瞑るおおかみ黒き鴨」は生き残りの狼が生きるための話で、全てが終わったあとの山縣さんの「生き甲斐はなくしたか?」という問いかけに「それに答えられるほど生きていない」と答えます。山縣さんは「お前だけ生き残るのもお前らしいと思うぞ」と。つまり生きようという意思が斎藤の中に確立された。ここがこの物語のゴールだと思います。

 半次郎は斎藤にとってのようだったんじゃないかなあ。風のように過ぎ去っていった。
 冒頭の新八「風に琴って書いて風琴。似合ってるよ。半さんに」が生きてきます、ものすごいこじつけですけど!!
 (9/5の公演では嵐のようだと思いましたが…)
 半次郎は半次郎でそれは斎藤の方が似合うなんて言っているのはやっぱり二人は通じ合うものがあるということなのか。ここはまだよく分からない。
 似た者同士ですもんね。9/4のアフタートークで青木さんがやってみたい役として半次郎を挙げてらして、薩摩にいながらちょっと孤独、あの感じがいい、と。聞いた時これだ!!!と答えが一つ見つかりました。半次郎のあの感じ。それから、なんだ斎藤と同じじゃないかって。集団の中にいながらどこか孤独。命のやりとりをする中で何かをお互いに感じ取ったんだろう、と松田さんと青木さんで言われていましたし。*1

 しかも半次郎は斎藤によってではなくガトリング砲にやられて死ぬ。土方と同じ死に方なんですね。
 
 オープニングで土方の前に半次郎が現れて笑いながら後ろに落ちていき、その直後ガトリング砲にやられ果てる土方っていうところ。あれもいろんな解釈が考えられていまだに分からない。
 五稜郭で土方に会った、ボロボロにやられたって半次郎が言いますし五稜郭なことには間違いない。その五稜郭で土方に会ったときのことなのか、それとも土方の幻覚あるいは"土方が見た半次郎"なのか。五稜郭で土方にボロボロにやられたと思ったらその場で土方がやられてしまうっていうことも考えられます。若干むりがある気もしますがwwでもそうなると戊辰と同じじゃないかって、それは半次郎にとってつらすぎるんじゃって思うので違うかなあ…

 それと今作の土方はよく笑う。半次郎もだけど全然違う。そりゃそうだ(笑)

 あと半次郎が黒き鴨である所以がまだわからない。山縣さんが半次郎を「言うなれば鴨だ。普通と違っておいしくもない、黒い鴨」と称する。この理由。そもそも鴨が中村半次郎の雅号である"鴨瞑"からきているはずなので深い意味はなさそう…って言わない方がよさそうですが(笑)普通と違っておいしくもない、って部分がポイントかな。
 薩長の大人達と半次郎っていうテーマも楽しいですね。
 戊辰での「俺に力が足りないから、信用できないから――」
 西南戦争での「まだ認めてもらえねえんすか」
 こういうところでは幼さを感じる。「まだ認めてもらえねえんすか」のあとの戊辰に勝った理由は大山だって西郷さんに言われるところ、9/4夜は子供っぽさがあって9/5夜は少年性を捨てられない青年って感じでした。

 曰く、"強い"役なんですよね。心技体強い、とパンフでも。結構いろんなところで仰っている。たしかに強いかもしれないけど客席からは弱さも窺えそうになる。ただ最後のシーンを見るとやっぱり強いんだなあとも思うし。半次郎の強さについてはまだ解釈ができません。

 まだまだ分からないことがいっぱい。
 もののふシリーズと酒というテーマもおもしろいし、佐川官兵衛…佐川さんは前作もふ虎を継ぐ役割があると思います。それに半次郎とのシーンがほとんどないこともあってやたら目を奪われる。

 冒頭で客席の照明が落ちる前に新八がアコーディオンで奏でているのって君が代ですかね。2回目でふと思ったんですが…
 と書きながらそうだwiki先生と思ったので調べてみた。

1869年(明治2年)に設立された薩摩バンド(薩摩藩軍楽隊)の隊員に対しイギリス公使館護衛隊歩兵大隊の軍楽隊長ジョン・ウィリアム・フェントンが国歌あるいは儀礼音楽を設けるべきと進言し、それを受けた薩摩藩軍楽隊隊員の依頼を、当時の薩摩藩歩兵隊長である大山弥助(後の大山巌日本陸軍元帥)が受け、大山の愛唱歌である薩摩琵琶の「蓬莱山」より歌詞が採用された。(君が代‐Wikipedia

 若干旋律が違うのは耳コピだからじゃないかな(言い過ぎ)

 考えるな感じろの舞台だと思うんです。台詞とかシーンとか感じてるだけで強く印象に残りやすいので考えるのはあとからでもできる(?) 2回目以降はとにかく全身で感じよう!って思いながら観ています。1階席ではロウソクか線香かの残り香が客席までふわっと届いて感動しました。
 とはいえやはり考察しがいのある作品だ…それにやたら壮大ですね。いい意味で必要以上に(笑)

 凌くんの演じる中村半次郎がねもう大好きなんです(泣)純粋にひたすらかっこよくて毎公演おなかいっぱい。9/5はちょっと違いましたが。しんどさが勝ってしまった。
 でもやっぱりいいなあ好きだなあ…という感じです。やめられないですね。北九州公演が楽しみです。

*1:HEROVISIONvol.61