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古びた壁

脈絡なんてものは知らない

ミュージカル「花・虞美人」3/31東京千秋楽

ミュージカル「花・虞美人」

 東京千秋楽に行ってきました。ネタバレ配慮ないよ!
 人ってすぐに自分の都合の良い態度を取るんだなあ、すぐに人に媚びへつらうんだなあ…などと思った作品。だから、(お、お前なー!)って思う瞬間が多かった(笑)でもそんな中でブレないモノがある。ブレないモノのためにコロコロと都合のいい人間に媚びへつらうのかもしれない。そんな作品かなあ。
 虞姫の衣装が気持ちの傾き加減によって色が変わっていくのが印象的でした。劉邦は赤色、項羽は青色がイメージカラー。序盤の劉邦への想いが強いときはピンクの衣装、もう会えなくてもなお忘れられない劉邦と優しくて情に厚い項羽の間で気持ちが揺れ動く中盤ではピンクと青の衣装(キービジュアルのやつ)、そして劉邦のことは振り切って項羽の側にいると決めると青の衣装になり、項羽が修羅となり殺戮を繰り返すようになるとピンクと青の衣装に戻ります。
 松田凌くん演じる子期も劉邦軍にいたときは赤でしたが項羽軍につくと青になりました。

 凰稀かなめさんの佇まいが美しくて、さすが…という感想ばかり。項羽と劉邦の話で最も有名な酒宴→剣舞のシーンでは虞姫も舞を披露していたのですが、すごい!美しい!圧巻!全編通してずっと思っていたのが、何が違うんだろう…という。当たり前なんだけどね。全身のどこにも無駄がなく隅々まで綺麗で美しい。
 それから女性アンサンブルの歌声が綺麗でした。聞き取りやすいし、透き通った感じがとても好み。以前某2.5ミュージカルでアンサンブルの歌声がすごく悪く言えば雑音になっていて何を言っているのか分からない、なんてことがあったので*1アンサンブルが多い今回は不安に思っていたんですが、吹っ飛びました。かわいいというより可愛らしい、そしてきれい。あんな女性になりたいなあと漠然と思います。

 子期、可愛かったです。みんなの弟!姉さん(虞姫)を想う健気な弟。
 結婚前夜の幸せなシーンがほんとうに可愛かった。村の女性達に混じってニコニコ歌う姿はとにかく微笑ましかった。虞がやってくると手を差し伸べてレディーファースト、めちゃめちゃ好きです。わたしもこんな弟が欲しい。
 それとお父さんに肩に両手と顔を寄せる仕草がすーーごく好きです。かわいいよー!この仕草、凌くんで見たことある気もした…よくしますよね、多分。
 子期はほんとうに姉想い。ブレません。劉邦が天下を取るために懐王(小野健斗さん)の血縁者である呂雉(高橋由美子さん)と政略結婚をするという時、劉邦軍は懐王に拱手するけれど子期だけ躊躇いがちだし、とうとう劉邦に本当にこれでいいのかと問うて場を乱す。「あの姉想いには困ったものだ」とすら言われます。
 姉想いがために、呂雉の手中の趙高(桑野晃輔さん)に促されるがまま項羽軍へつく。
 この時、子期はかつて慕っていた劉邦のことを呼び捨てにし項羽へ忠誠を示します。あーそっかあ…って思った。この項羽への忠誠の示し方が、完全なものではなく姉への気持ち故のものだと感じた。彼は全ての行動が姉のためにある。あまりにまっすぐである。凌くんが演じることで説得力でいっぱい。自己満足に過ぎない、自分のためでしかないけれど。
 姉想い故に項羽軍で戦い、死んでいく。死に際の言葉も「姉さん…」だった。最期のシーンは俗に言う死亡フラグで登場したのでああ死ぬなと思っちゃいました。少し記憶が曖昧でちゃんと覚えていないけれど、姉さんのために…というようなセリフを言っていた。とにかくあからさまな死亡フラグでした。
 最期は姉を想いがむしゃらに戦います。もはや剣を振り回しているだけになって叫んでどうしようもないなあ…もっと違う未来もあっただろうに、これが子期の運命なんだなと思いました。
 凌くんのエネルギー溢れるお芝居がほんとうに好きです。ふと口から溢れてしまったような声を発するのも好きでした。
 そういえば東京楽は、項羽軍について虞姫と再会したあと范増(大澄賢也さん)に跪き拱手するシーンで、膝から滑ってしまったんですね。范増が「大丈夫か」と聞くと「姉さんに会えたのが嬉しくて…」と答えていました。思わぬハプニングにかんぺきなアドリブ…!相手が大澄さんでよかったー!とも思いましたが(笑)この日一番の会場の笑いを誘っていました…さすが…。
 カーテンコールの挨拶も「姉さんが大好きです!」に感謝の意を添えただけ。ブレません(笑)かなめさんに「凌」って呼ばれてたのもなんだかいいなー!って思いました。
 あと殺陣が飛び抜けて速かったうまかった。身体能力の高さが目につきました…。
 子期、ほんとうによかった!

 ミュージカルにしては(?)ナンバーが少なかったのでソロが1曲もない人もわりといましたが、皆一様にいい役でしたし見せ場がありました。
 とくに桑野くんの趙高はオネエで終始注目しました。オネエの趙高、自分が生き残るために呂雉の言いなりになったりいろいろしたけれど、最後の最後で虞姫に謝る。虞姫といい関係性を築いていたと思います。オネエと悩める女性っていうテンプレです。心の支えだったのだと思います。
 大澄さんの范増がとっっても素敵でした。項羽が心の暴走を止められず「もう軍師はいらないということか」と范増が聞くと「そうだ」と答えられ、項羽のもとを離れもう誰の軍師にもならず故郷に帰ると言うナンバーは一番心打たれたシーンです。「故郷に辿り着けるか分からんが」って言うのがぐわっときました。ぶっちぎりしんどい!

 人がバタバタ死んだ(言い方)今作、誰も心の底からは結束しようとはせず自分のために生きていた。だからすれ違うし、だから皆死んでいくのかもしれない。
 今回は凌くんのおかげでずっと行きたかった赤坂ACTシアターへ行くことができ、綺麗な桜も見て、子期の生き様を観ることができてよかったです。

*1:劇場の問題もあるかも

舞台『K』第二章-AROUSAL OF KING-を思い出す~舞台『東京喰種』によせて~

 まってまってまって!とおたく丸出しの初見感想を経て、いろいろ考えた。どうしても思い出すのが一昨年夏のKステだ。いつも通りうだうだと展開しているけれど、大事なことは一番最後に記すことにする。

 グルステ(と呼んでいいの?)は金木研役を一般公募オーディションで決めるという話がそういえばあったなあ。まさかグルステに遭遇するとは思いもしなかった。ひとをたべる、というあらすじを見た時点でこれは苦手ジャンルだ!と決めつけて遠のいていたんだけれどなあ(笑)でも知っている方の話を聞くと、実はそうでもないのでは?と考えを改めた。とっつくだけとっついてみようと思う。

 さて。一般公募オーディションによる厳正なる審査の結果、金木研役は松田さんに決まったそうだ。原作が好きで飛び込んだのだとか。すごい!以外の言葉が出てこない。本当にすごいひとだ、と思う。こういうオーディションって、新人さんが選ばれることが多い印象だ。まさに薄ミュ斎藤篇の話だ。オーディションはたしかにプロアマ問わずであるのだろうし、無論厳正なる審査には違いないのだと思う。でもそこに彼が現れたら、誰も勝てなくない…?と思ってしまう(贔屓目)。実力で勝ち取ったのはたしかだ。ほんとうに、純粋にすごいなあ好きだなあって。今この段階での、この選択も。ああ、なるほどな…って。かなり拡散されていてまた嵐を呼び起こした…?!と思う。大旋風じゃん……!!

 ところでやっぱり、2015年夏に上演された舞台『K』を思い出すのだ。制作が同じマーベラスだからということもある。そして夏、主演。どうしても思い出すのだ。わたしにとってKステは思い入れが深い。今こうして凌くんのことを好きでいるのも、この作品があったからだと言える。伊佐那社は存在したのだ(これは言いたいだけ)。
 凌くんのことを本当にすごいひとだなと思ったのが舞台『K』第二章-AROUSAL OF KING-。最初から最後まですごかった。とにかくすごい。すごすぎてプレゼンできないのでとにかく見て!としか言えない。どこまで贔屓目なのか分からないのだけれど、伊佐那社という役は凌くんだからこそできたのだろうなと思う。
 凌くんのお芝居で一番好きなところの一つが、涙がきれいだということ。この作品でシロが流す涙は、非現実的なもので、共感とは程遠い。どんなに解釈しても絶対に理解のできない涙。でもすごくきれいだったのが印象深い。
 涙の理由を観客はたいてい理解することができる。悲しいから泣いている、嬉しくて泣いている、感動のあまり泣いている、など。言葉にはできなくても、なんとなくどんな涙なのかをぼんやり感じることができる。
 ところがKステ第二章で不死身のシロが流す涙は、人間として正しく寿命があり死を迎えるわたしには、まだ二十年ほどしか生きていないわたしには理解できない。それが正解だと思う。到底理解できない涙を流す凌くんがすごいと思った。

 シロは物語の後半で無色の王を自分の中に取り込む。無色の王はこれまでずっと様々な人間のからだを渡り歩いたため、人格が崩壊しかけている。つまるところ多重人格なのだけれど、これがまたおもしろかった。表に出てくる無色の王を抑えながら伊佐那社として行動する様が引き込まれる。

 伊佐那社という不可解な存在を、不可解なまま演じてくださった。とくに第二章のシロ/伊佐那社はたくさん背負うものがあった。こういうときに東奔西走という言葉を使うのだろう。何かを観るとココがすき!というポイント、いわゆる"見せ場"があるけれど、この作品の凌くんに関してそれが挙げられない。最初から最後まで隙なくすごかった。とにかくすごかった。やっぱりシロは、伊佐那社は存在していたんだ。
 Kは原作が好きだったから、舞台『K』の主演が凌くんだったのは運命かもしれない。人を好きになるって神様のお導きでしょう(言いたいだけ)?なにかひとつでもズレがあれば、今はないわけで。

 余談。
 東京楽のカテコでアンナ役の磯部花凛ちゃん*1があまりにふわふわしていて凌くんが「天使かな?」ってぼそっと言ったことが印象深かった。聞き逃さなかったぞ!(笑)なんだかよくわからないけれど、なるほどって思った。感性が垣間見えたというか…(?)
 花凛ちゃんのアンナは、まさにアンナだった。何も伝わらない?知ってる!ほんとうに可愛いし、凌くんが花凛ちゃんのことを天使かなって言ったり周りがお花畑って言ったり*2するあたり、なるほどそういうところがまさにアンナなのだろうとも思う(ざっくり)。
 Kステ第二章のアンサンブルには有澤くんもいる。Kステのアンサンブルは屋台骨とも喩えられる。有澤くんはヴァイスマン(後のシロ=伊佐那社の魂は彼のもの)を演じていた。舞台上がアンサンブルキャストのみの場面が数分続くのだが、その一役を担っていた。初舞台と知って困惑した。無色の王に乗っ取られたヴァイスマンも演じていたけれど、まあすごい!初舞台詐欺!そういえば東京楽でひとこと挨拶をしていたけれど、初舞台ということはあれが初めての挨拶でもあったのだなあと今感慨深くなっている。一人だけ声量が小さくなって微笑ましかった。本編ではあんなに無邪気なヴァイスマンだったりあんなに悪役だったのにな…。そんな彼を次に観たのは刀ミュ阿津賀志山異聞のライビュだった。なんとサプライズ登場(びっくり)!一年前控えめな挨拶を見たのに、スクリーンの向こう側でセンターで歌って踊っている瞬間を不意打ちで見せられた。感激のあまり喉が枯れた(は?)


 Kステは最後まで走り抜けることができなかった作品。大千秋楽が不完全な状態となった。直接の原因はキャストの体調不良で、アンサンブルも含め全キャストが走り回る作品でありながら無理のあるスケジュールだったらしい。わたしにはスケジュールのことはよくわからないけれど、密なスケジュールは当然こういった事態を招くだろう。体調管理も仕事の一つだとかプロなら最後までやり遂げるべきだとかアンダーはいないの、などいろいろと語られたけれど、本当のことはもはやよくわからない。ただ一つ変わらないのが、失敗は失敗だということ。当然美談でもないし起きてはいけない事態だった。
 あの時のブログは、時々読み返したくなる。不完全に終えた作品の座長のエントリー。本当のところはどうであれ、この作品に関して最終的に残した記事がこれであることが、今でも彼を応援している理由の一つだ。
ameblo.jp

 舞台『東京喰種』の制作はマーベラスで、つまりKステを知っている。関わっているスタッフのメンバーが全く違ったとしてもおそらく、座長の姿を知っているんだ。それが全く影響していないとは思えない。"厳正なる審査"というのがこういった他作品でのことを考慮から外すという意味だとしても、Kステ第二章は変わりない事実だし考慮しないと言っても記憶から消えるわけではないから。


 ところで凌くんのブログはかんぺきだと思っている。芸術品の域だなあなんて時々思う。でもゆるい記事やふわっとした記事も時々あって、ブログの読者として心身が固くならない。世界一好きなブログだ。

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*1:雪村千鶴役/薄ミュ原田篇、朝美役/ミュージカル手紙2016

*2:ameblo.jp